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[2013年9月:公表]

結婚相手紹介サービス契約に関し、書面不備があったことから、退会後のクーリング・オフを認めた事例

 本件は、結婚相手紹介サービス契約について、交付書面に不備があったことから、消費者が退会後にクーリング・オフを主張したケースにおいて、特定商取引法(以下「特商法」)で定められた特定継続的役務以外のお見合いツアー、成婚ツアー等も一体の契約であることを理由として、契約全体のクーリング・オフを有効と認め、契約金全額の返還を命じた事例である。(東京高裁平成22年9月22日判決)

  • 判決文未登載

事案の概要

原告・控訴人:
X(消費者)
被告・被控訴人:
Y1(結婚相手紹介会社)
被告・被控訴人:
Y2(Y1の代表取締役)

 本件は、主位的請求*として、XがY1と締結した結婚相手紹介サービスの範囲が、結婚相手紹介、海外お見合いツアー、成婚ツアーも含む内容のものであり、Y1に対し特商法に基づくクーリング・オフ規定により契約解除したとして、支払い済みの合計3,708,000円と遅延損害金の支払いを求め、成婚ツアーが別契約であった場合、予備的請求*として、Y2に対し、履行不能となった成婚ツアーに対して、Y1は成婚ツアー代を不当に利得していると主張し、入会金等を請求した事件である。

 Xは入会当時51歳、男性、会社員である。Y1は、結婚相談業および結婚仲介業等を業としている事業者である。

 Xは、2007年1月13日、Y1事務所において、ウエディング情報閲覧・お見合い・交際・結婚アドバイス、紹介対象は日本人女性という条件で、登録期間1年、入会金357,000円、月会費8,000円の結婚相手紹介サービス契約を締結した。

 Y1のシステムは、インターネットを用いて登録会員から結婚相手を検索できるシステムであり、Xは自宅のパソコンで結婚相手を探していたところ、入会1カ月を経過した頃、Y1担当者から、中国人女性との国際結婚を勧められ、同年3月頃、上海でのお見合いツアーに参加するよう勧められた。Xは、お見合いツアーに参加することとし、ツアー料金157,500円を支払い、5月3日から5日まで参加した。

 帰国後の5月19日、Xはお見合いツアーで知り合った中国人女性との結婚誓約書に署名した。同26日、XはY1に対し、その中国人女性と上海で結婚式を挙げるための結婚式料、成婚ツアー料として3,097,500円を支払った。

 しかしその後、Xは婚約を撤回し、それを理由に、同年6月2日、Y1、Y2それぞれに対し結婚式料、成婚ツアー料の返還を請求したが、拒否された。

 Xは訴訟代理人(弁護士)を通じ、Y1に対し、7月14日到達の書面で、本件は特商法の特定継続的役務提供に該当するが、交付書面に同法が定める契約書面の記載事項のうちクーリング・オフに関する事項、役務提供期間、中途解約に関する事項、清算方法などの記載がないことから、クーリング・オフする旨を通知し、既払金全額の返還を求めた。原審は、Xの請求を一部棄却したため、Xが控訴した。

 本件の主な争点は、(1)クーリング・オフは可能か(2)お見合いツアー、成婚ツアーは本件サービス契約と一体の契約か別個の契約か等であった。

  • * 民事訴訟において用いられる請求方法の1つ。裁判所に対し、まず認めてほしい請求を「主位的請求」と位置づけ、主位的請求が全部または一部認められなかった場合に備えて「予備的請求」を提示する。主位的請求が認められた場合、予備的請求については、本件のように裁判所による検討が行われない。


理由

 裁判所は、以下のとおり、XのY1に対する請求(主位的請求)を全部認容した。Y2に対する請求(予備的請求)については理由がないと判断し、これを認めなかった。

(1)クーリング・オフは可能か

 仮にXが退会していたとしても、本件契約においては「書面不備」等が認められクーリング・オフ期間は経過していないとされる。その場合、クーリング・オフの制度は、事業者の相手方を、契約の拘束から開放するにとどまらず、相手方に既払金の返還を確保するなどその保護を図るものであることを考慮すると、クーリング・オフの権利行使を契約終了時までと限定することは相当でない。

 このことから、たとえXがY1の会員を退会した後であっても、本件契約についてXはY1に対し、クーリング・オフをすることができるというべきである。

 Y1らは、本件婚約が成立した後の解除権行使は、信義則上許されず、権利濫用として認められない旨主張するが、本件婚約の成立は現に認められないし、その他、本件において、Xの本件契約の解除権行使が信義則に反していたり、権利濫用に当たるとすべき事情を認める証拠はない。

(2)お見合いツアー、成婚ツアーは本件サービス契約と一体の契約か別個の契約か

 特商法48条1項について、同項は条文文言からも明らかなように、特定継続的役務の提供契約の中に、特商法の定める特定継続的役務と、それ以外の役務ないし商品の提供が一体として含まれている場合、当該契約に基づく役務提供の内容を分割し、特商法の定める特定継続的役務の提供に当たる部分についてしかクーリング・オフが及ばないと解することはできないというべきである。

 本件契約により定められた役務提供の内容は、結婚相手紹介サービスのみでなく、お見合いツアーや成婚ツアーも含まれることから、一体としてクーリング・オフの対象となるべきものである。

 この点、一連の契約であるとして、特定継続的役務の提供に当たらない部分までクーリング・オフの効果が及ぶとすると、特商法48条2項の趣旨を無視することになり、不合理であるとの指摘もあり得るが、そもそも事業者がそのような契約形式を選択したものであり、不合理とするのは当たらない。



解説

 特定継続的役務提供契約である結婚相手紹介サービスの契約において、サービス利用後、書面の記載内容に法定記載事項の欠落があったり、法律の規制に反した消費者に不利な記載があったことから、クーリング・オフ期間が経過していないとしてクーリング・オフを行使し、支払金額全額の返還を求め、これが認められた事例である。

 交付書面の記載内容に法定記載事項の不備があることから、8日を経過した場合でもクーリング・オフを認める流れは、判例として確立したものとなっている。

 本件では、記載の不備な部分がクーリング・オフ、中途解約と清算など根本的な部分であり、当然にクーリング・オフが認められた。

 本件の特徴は、結婚相手紹介サービスに、お見合いツアーや成婚ツアーも一連の契約として含まれていた場合、全体を一体として特定継続的役務提供契約として扱われるかが問題となった点である。

 一体として扱われるのであれば、クーリング・オフ、取消し、中途解約などが、すべてに及ぶことになり、消費者被害の救済のために大きなメリットがある。

 本件判決では、「特定継続的役務の提供契約の中に、特商法の定める特定継続的役務とそれ以外の役務ないし商品の提供が一体として含まれている場合、当該契約に基づく役務提供の内容を分割し、特商法の定める特定継続的役務の提供それ自体に当たる部分についてしかクーリング・オフの効果が及ばないと解することはできないというべきである」と明確な判断を示した。

 相談実務では、当然のこととして処理してきたものであるが、特定継続的役務に関し、この趣旨の判断をしたものがあまり見当たらないなか、類似のケースを解決する参考となる。

 本件では、Y1らは「Xが結婚相手が見つかったことによって退会した」と主張し「もはやクーリング・オフをする余地はない」と主張したが、婚約は破棄されていることから、役務提供後であってもクーリング・オフ期間内であればクーリング・オフはできるとする当然の判断を示した。

 なお、訪問販売によるリフォーム工事契約に関するクーリング・オフでは、工事が完了した場合でも、クーリング・オフを認めた判決が多数ある。

 特商法では、「申込者等の土地又は建物その他の工作物の現状が変更されたときは、当該役務提供事業者又は当該指定権利の販売業者に対し、その原状回復に必要な措置を無償で講ずることを請求することができる」(同法9条7項)と定められているもので、役務提供後でも当然にクーリング・オフは可能である。



参考判例

役務提供後のクーリング・オフに関するものとして

  1. (1)神戸簡裁平成4年1月30日判決
    (『判例時報』1455号140ページ)
  2. (2)東京地裁平成5年8月30日判決
    (『判例タイムズ』844号252ページ)
  3. (3)東京地裁平成6年9月2日判決
    (『判例時報』1535号92ページ)
  4. (4)東京地裁平成7年8月31日判決
    (屋根用鋼板工事の訪問販売『判例タイムズ』911号214ページ)

などがある。



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