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[2012年10月:公表]

結婚相手紹介サービス業者の不実告知と元取締役の不法行為責任

 本件は、結婚相手紹介サービス会社の会員となった女性が、男性会員を紹介してもらう契約を締結し、契約金約90万円を支払ったが、契約締結の勧誘の際、担当の従業員が男性会員数を実際の約3倍ほど多く伝えたことは不実告知であり、従業員に対し当該不実告知を行うよう指揮・監督をしていた契約当時の取締役の行為は、不法行為を構成するとして、損害賠償を請求した事例である。

 裁判所は、従業員が本件契約の締結を勧誘するに当たり、男性会員数を実際より多く伝えたことは、本件契約締結の判断に影響を及ぼす重要な事項につき、不実告知をしたものであると認定し、当該指導を行った結婚相手紹介サービス業の当時の取締役の不法行為責任を認めた。 (東京高裁平成22年1月27日判決)

  • 『消費者法ニュース』84号241ページ

事案の概要

原告:
被控訴人 X(消費者)
被告:
控訴人 Y1、Y2(A社の取締役)
関係者:
A社(結婚相手紹介を業とする株式会社)
B(A社の従業員)

 Y1は、1996年、ニューヨークに住む日本人男女、欧米人男性を対象とする結婚相手紹介サービス業を始め、ニューヨーク州法人を設立した。

 その後、Y1はY2と結婚し、Yらは、2001年、日本において結婚相手紹介サービス業を目的とするA社を設立するとともに取締役の地位に就いた。また、2003年から2005年にかけてロンドン、サンフランシスコ、ロサンゼルスにもオフィスを開設し(ただし、オフィスは別法人組織である)、東京を含め5カ所のオフィスを拠点として活動していた。

 X(女性)は、2007年8月初め、A社を訪れ、Bほか2名の従業員から2時間にわたる面接を受け、紹介を受ける男性会員についての希望を述べたり、自分の職業・経歴その他を述べたりし、本件契約について説明を受けた。その際、XがA社の男性会員数を尋ねたところ、Bは「支店が5、6店舗あり、各支店に平均200人から300人の男性会員がいる」と答えたため、Xは合計1,000人以上の男性会員がいるものと認識した。

 そこで、Xは、同年8月30日、約90万円を支払って本件契約を締結し、A社の会員となった。

 なお、A社は、2008年に東京都から特定商取引に関する法律(以下、特商法)違反を理由として6カ月間の業務停止命令を受け、Y1およびY2は同年2月に取締役を辞任している(この件に関し、A社は2008年5月下旬、業務停止命令の取消訴訟を提起したが、その後取り下げた)。

 Xは、2008年4月頃、A社に契約の解約を申し入れた。A社はこれを承諾し解約返戻金は約30万円である旨記載した書面をXに送付したが、A社からその金銭は支払われていない。

 A社は、その後、Xに対し、本件契約を解除し、会員から除名する旨の書面を2009年5月13日付で送付した。

 Xは、2008年7月4日、A社、Y1、Y2他を被告として損害賠償訴訟を提起したが、Yらは全員が出頭せず、準備書面も提出しなかったため、同年9月9日、欠席判決が言い渡された。これに対し、Y1およびY2のみが控訴した(他の被告は控訴しなかったため一審判決が確定)。

 控訴審の争点は、Y1およびY2の不法行為責任であり、契約締結を勧誘する際、本件契約に関する事項であってXの判断に影響を及ぼすこととなる重要な事項につき、不実の内容を告げる行為をしたか(特商法44条1項柱書)であった。



理由

(1)重要事項か否か

 本件契約締結に当たり、A社に男性現役会員が約1,000人いることが、どのような意味を有するかについては、Xが「2007年8月当時、A社の男性現役会員が約1,000人でなく、その半数にも満たない人数であると知っていたら本件契約を締結しなかったと思う」と供述している。また、東京都の立入調査の際、Bは「ほとんどの顧客が会員数や成婚率を尋ねる」と述べており、従業員の接客研修用録音データにも顧客からの会員数についての質問に対する従業員の回答のしかたについて繰り返し触れられている。これらによれば、入会を検討する者は会員数について関心が高いことは明らかであり、Xも同様であったとみられることから、男性現役会員数が約1,000人であるか否かは、本件契約に関しXの判断に影響を及ぼすこととなる重要な事項であったと評価するのが相当である。

(2)不法行為の成否

 A社は、Xに対し、本件契約締結の勧誘に際し、本件契約に関する事項であってXの判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの(男性会員数)につき、不実のことを告げる行為をしたものであり、これは不法行為を構成するというべきである。

(3)Y1およびY2の民事責任

 Yらは、A社の取締役の職務の一環として、従業員の顧客に対する会員数の説明方法につき指導、監督しているところ、「会員」という語は、現役会員を指すと認定できる。また、Yら自身、現役会員数を把握していないにもかかわらず、的確な資料がないまま顧客にずさんな会員数を告げるよう従業員を指導するという明確な意思、すなわち悪意があったものと認められる。

 Yらは、「仮に、メンバーの人数を多く言っていた事実があったとしても、それにより、A社により多くのクオリティーの高いメンバーが入会するきっかけになるのであれば、すべてのメンバーにとって、プラスとなることはあるにせよマイナスになることはないとも考えられることであり、営業努力の一環で、任務懈怠(けたい)にさえも当たらないともいえる」と主張するが、この主張は適当ではないうえ、Yらの姿勢が特商法44条1項に反すると看取されるというべきであろう。

 以上からYらは、本件不法行為につき、会社法429条に基づく損害賠償責任を負うとして、契約金および弁護士費用の一部につきXの請求を認めた。



解説

 本件は、結婚相手紹介サービスにおいて、事業者が、契約の締結について勧誘をするに際し、会員数を水増しして説明して契約させていたことについて、特商法で禁止している不実告知に当たると認定したうえで、業法に基づく取締規定違反があることから、事業者については不法行為責任を負うとの判断をした。

 また、契約締結当時の取締役が、従業員に対する契約勧誘の方法等の指導において、正確な会員数を把握していないことを自覚しながら、消費者から質問された場合には水増しした会員数を説明するように指導していたとの事実認定を行った。そして、当該取締役には悪意があったものと認定し、会社法429条1項の「役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。」との規定に該当するとして損害賠償責任を認めた。

 特商法44条では、特定継続的役務提供における不実告知の禁止について、「一 役務又は役務の提供を受ける権利の種類及びこれらの内容又は効果(権利の場合にあつては、当該権利に係る役務の効果)その他これらに類するものとして主務省令で定める事項」「七 顧客が当該特定継続的役務提供等契約の締結を必要とする事情に関する事項」「八 前各号に掲げるもののほか、当該特定継続的役務提供等契約に関する事項であつて、顧客又は特定継続的役務の提供を受ける者若しくは特定継続的役務の提供を受ける権利の購入者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの」と定めている。

 本件判決は、結婚相手紹介サービスでは、会員数が、消費者の当該契約を締結するか否かの判断を左右する重要な情報であり、この事実についての不実の告知は、特商法44条の禁止行為に該当するものと判断した点が参考になる。

 本件では、事業者は経済的に破たんしているため、当時の取締役に対し損害賠償請求をしたが、特商法の取締規定の上記の違反が、当時の取締役の悪意または重過失によるものであり、第三者である消費者に対して損害を与えたとして不法行為に当たるものと認定し、損害賠償を命じた。

 損害額は、支払い済みの契約金額約90万円と、Yらの悪意または重過失と相当因果関係を有するとして弁護士費用9万円を認めた。



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