[本文へ] 消費生活・消費者問題に関する事例や対処方法を紹介しています。

現在の位置 : トップページ > 相談事例・判例 > 消費者問題の判例集 > ドロップシッピングが特商法の業務提供誘引販売に該当するとして解除および原状回復を認めた事例

[2012年7月:公表]

ドロップシッピングが特商法の業務提供誘引販売に該当するとして解除および原状回復を認めた事例

 本件は、ドロップシッピング(「解説」参照)の一形態であるインターネットショッピング運営支援事業を展開するYと当該事業の利用契約を締結したXらが、特定商取引に関する法律(以下「特商法」)によるクーリング・オフをしたとして、契約解除に基づく原状回復を請求した事案である。

 裁判所は、いわゆるドロップシッピングは、特商法51条1項の業務提供誘引販売に該当するとしてクーリング・オフを認めたうえ、ドロップシッピングを利用して商品を販売した利益について原状回復請求権から損益相殺をすべきでないとして、Xらの請求を全額認めた。(大阪地裁平成23年3月23日判決)

  • 『消費者法ニュース』88号266ページ他

事案の概要

原告:
X1〜X4(消費者)
被告:
Y(インターネットショッピング運営支援会社)

 Yは、経験のない者でもネットショップのオーナーになって運営できるように事業支援を行うことを業務としていた。その内容は、

  1. (1)Yがネットショップのウェブサイトの作成、ドメイン取得およびサーバーの設置を行う
  2. (2)取扱商品はYが用意したものの中から加入者が選択する
  3. (3)販売価格は加入者(X1〜X4)が決定するが、Yからも参考価格が教示される
  4. (4)購入者からの質問メールへの回答は加入者が行うが、定型回答文をYが用意する
  5. (5)購入者からの注文メールは加入者とともにYにも送信されるしくみとなっており、Yは受注処理、発注手続きを行う
    ただしYは、加入者から発送依頼を受けた場合でも、数量・規格・価格・受取条件に対してYの判断で拒否することができる
  6. (6)代金は銀行振込の場合には加入者の口座に振り込まれるので、加入者が仕入れ代金の支払いをする
  7. (7)Yは、広告やSEO*対策といった宣伝、集客活動を行う
  8. (8)加入者は、随時、Yから提案や助言等のサポートを受けることができる

 というものであった。

 Yは、インターネットのホームページに「とにかく簡単」「ウェブサイト制作、仕入れ、在庫管理、商品の配送をYがすべて代行するサービスを提供することで、オーナー様の手間を極限まで『ゼロ』に近づけました」などと表示し、パンフレットにも同趣旨の「加入者は、お客様からの質問メールに回答、入金確認+Yへの入金完了メール、仕入れ代金のYへの支払い」という「簡単な仕事だけでOK!」「だれでもカンタン!手間いらず」などと説明していた。

 Xらは、いずれも個人であり(X4はコンビニを経営しているが、自宅に置いてある私用パソコンで本件業務を行っており、コンビニ業務の一環として行っていたものではない)、インターネットのホームページや案内パンフレットを見て利用契約を締結したが、実際には商品選択や価格決定等に関する加入者Xらの自由は無いに等しかった。

 Xらは、Yが特商法55条2項所定の書面(契約書面)を交付していなかったことからクーリング・オフ通知を出し、支払い済みの契約金額(約110万円〜220万円)の返還を求めた。

 これに対し、Yが特商法上の業務提供誘引販売には当たらないため同法の適用はないとして拒絶したことから、Xらは提訴した。

  • *検索エンジンで検索結果の上位に掲示されるようウェブサイトを最適化すること。Search Engine Optimizationの略。


理由

業務提供利益の「業務」について

 インターネットショッピング運営支援事業においては、購入者に対する関係では加入者が売主となるものの、ネットショップの実質的な運営主体はYであり、Xら加入者は、その運営の一部の作業をYの指示のもとYに従属した立場で行っていたに過ぎない。

 したがって、本件各契約において、Xら加入者が従事する業務は、ネットショップの実質的な運営主体であるYにより提供される業務であるというべきである。

 なお、Yは、特商法でいう「業務」とは「内職仕事」や「モニター仕事」のような一定の統一性や継続性をもった仕事に限定されるのであり、本件は「業務」に当たらないと主張する。

 しかし、特商法51条が業務提供誘引販売取引における「業務」を「事業者が自ら提供を行い又はあっせんを行うもの」としている趣旨は、相手方が従事することとなる「業務」と「その業務について利用する商品・役務」が同一の事業者によって提供される関係にある場合には、相手方は確実に業務に従事することができ、結果確実に利益を収受できると期待することから、そうでないものと比較し、相手方に対する強い誘引力を有するため、これを規制対象として、相手方の利益保護や取引の適正化を図ろうとするところにある。

 このような同条項の趣旨に鑑みれば、ここにいう「業務」とは、従事することにより一定の利益が得られる仕事、作業であれば足りる。

 そして本件各契約では、Yが契約書面を交付しておらず、XらはYに対して同法58条1項に基づく解除(クーリング・オフ)の意思表示を書面で行っているため、本件各契約は有効に解除されたものと認められる。

Xらの請求額から商品の販売利益を控除すべきかについて

 Xらは、Yが作成したウェブサイトを利用して、商品および販売価格をネットショップに掲載する、購入者からの入金を管理する等の業務に現実に従事しており、Xらがこれらの業務に従事した事実は、クーリング・オフに基づく解除により覆滅(ふくめつ)されるものではないから(Xらと購入者との間の商品の売買契約およびXらとYとの間の売買契約の効果も覆滅(ふくめつ)しない)、Xらが取得した上記利益は、これらの業務に従事したことの対価として得た利益というべきであり、これらをXらの原状回復請求権の額から控除すべき理由はない。



解説

 ドロップシッピングとは、一般的にネットショップで販売業務を行うに際し、ショップ経営者が、卸売業者に購入者に対する商品の配送業務を委託するタイプのものを指すもので、在庫を持つ必要がない点にメリットがあるとされている。

 一方、ドロップシッピングに関する消費者被害事例は、事業者が消費者に対し、ホームページの制作・メンテナンス、販売促進のプロデュース、商品の提供・選択・価格設定、ホームページへの掲載、商品配送などを高額な費用で引き受け、契約してショップオーナーとなった消費者は、事業者の指示に従い顧客からの注文管理・業者への注文、代金の入金管理と仕入れ代金の支払いなどの簡単な事務処理を短時間行えば利益が得られると説明されるタイプのものである。

 ショップのオーナーになるとはいうものの、業務として行うのは、事業者から指示された単純な事務作業に過ぎず、ショップオーナーとしての実態を備えているとは言い難く、加入する消費者には自分がショップの経営者になるという認識はない。

 被害の実態としては、ほとんど販売利益が得られず、加入するために業者に支払った金額の損失を被るというものである。

 ドロップシッピングをめぐる争点としては、形式的には、消費者がネットショップを営み購入者に商品の販売を行うかたちを取ることから、「業務提供」といえるか、さらに、業務提供誘引販売の「業務」に該当するかの二点である。

 ドロップシッピングの多くの事例では、加入した消費者は、小売業者としての経営判断はする必要がないことに惹(ひ)かれて契約しており、ショップの経営判断や業務のシステムの提供はすべて事業者が行っているのが実態である。

 こうした実態上、本件判決では、経営判断を行っているのは事業者であり、加入者は事業者に指示された事務作業を行うものであることから、「業務提供利益」の「業務」に当たるとし、商品販売価格と仕入れ価格の差額を収受し得るとして契約の締結について誘引したことは、「業務提供利益が得られるとして誘引した」といえると判断した。

 ドロップシッピングに関しては、横浜地判平成22年4月15日(判決文未登載)があるが、「業務提供利益」の「業務」該当性の判断が明確でなく、本件判決はこの点について明快な判断をした点に意義がある。

 また、不当利得返還請求に関して、加入者が得た販売利益についての損益相殺を否定した点も重要で、業務提供誘引販売だけでなく連鎖販売取引などの実務の参考となる。



消費者問題の判例集トップページへ

ページトップへ