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[2012年6月:公表]

投資顧問契約勧誘の際、断定的判断の提供があったとして消費者契約法4条による取消しを認めた事例

 本件は、一般投資家が投資顧問会社の従業員から投資顧問契約締結の勧誘を受けた際に「必ず損を取り戻せる」等の断定的判断の提供があったとして、消費者契約法4条1項2号による取消しおよび不当利得返還等の請求をした事案である。

 裁判所は、断定的判断の提供があったこと、消費者がその旨を誤認した結果、契約が締結されたことを認め、同条項による取消しができるとしたうえで、不当利得返還請求の一部を認めた。 (大阪高裁平成22年10月8日判決)

  • 未登載(確定)

事案の概要

原告・被控訴人:
X(消費者)
被告・控訴人:
Y(投資顧問会社)
関係者:
A(Yの従業員)
B(Yの代表者)

 昭和19年生まれの専業主婦であるXは、当初、甲証券の店頭で担当者の勧めに従って株式の取引をしていたが、平成19年ごろからは手数料が安い乙証券のインターネットによる株式取引を利用するようになった。

 しかし、Xは株式についての知識が不十分で、平成20年6月当時には甲証券の取引で300万円余り、乙証券の取引で200万円余りの損失を出したため、このことを気に病んで、株の損を株で取り戻したいという気持ちを強く抱くようになった。

 そのような中、Xは、インターネットで投資顧問会社Yの存在を知るようになり、平成20年6月3日にYに電話をかけた。Yの従業員Aは、Xから、手持ち資金は株式売却代金の700万円程度であること、株取引で500万円ほどの損失を出して気に病んでいることを聞いたうえで、Xに対して「投資顧問契約を締結して私の助言を受ければ損を取り戻せる」「低位株(株のそもそもの価格が相場全体の株価水準に比べて小額のもの)のいいのがあるが会員にならないと教えられない」などと言った。

 また、会費と登録料で200万円と聞いたXが、もっと安い会員はないかと尋ねると、Aは、「それでは損は取り戻せない」と答えた。Xが「会員になったら会費の200万円と損した500万円が取り戻せるのか」ということを何度も尋ね、Aは、その度に「自信がある」「任せてください」「大丈夫です」などと答えた。

 同月11日になり、AがXに対し電話で「今買うといい株がある」などと勧誘したことから、Xは本件投資顧問契約の締結に同意し、同日、200万円をYの銀行口座へ振り込んだ。

 Xは、その後約1カ月半にわたり、Yの助言に基づいて合計4銘柄を取引したが、その取引中から、支払った200万円と500万円の損を取り戻すのは到底無理だと思うようになり、消費者センターに電話で相談して同年8月8日にファックスで解約通知をした。なお、取引の損益は約10万円の損失に終わった。

 Xの代理人は、同年11月14日付内容証明郵便で、Aの行為は断定的判断の提供であるから、本件投資顧問契約を消費者契約法により取り消す等の意思表示をし、提訴した。

 原判決(奈良地裁平成22年3月26日判決、『消費者法ニュース』84号293ページ)は取消しを認めた。

 これに対し、Yは、断定的判断の提供はしていないし、Xは最終判断を自分で行っており誤信した事実もないとして控訴した。



理由

 Xは、夫の収入から蓄えた貯蓄を注ぎ込んでインターネットで安易に株取引を繰り返すうちに取引損失を拡大させ、500万円以上の損失を出した結果、700万円しか手持ち資金がないという状況の下で、単に「株取引に絶対はないが自信をもって対応していく」という程度のAの言葉によって、本件契約の締結を決意し、即座に200万円を振り込むというのは、本件契約締結の契機として社会通念上考えにくいというべきである。

 また、Xは、Bに対し、解約理由として、Aが会費および登録料としての拠出やこれまでの損失を絶対取り戻せると言ったにもかかわらず、そのような結果が出ないということを訴えているのに対し、BはAの発言について何ら否定することもなく、むしろ、交代した担当者の助言も的確であるから信頼してほしいという話を繰り返し、本件契約当初「絶対取り戻せる」という言葉を信頼したXの気持ちを取り戻すようにという趣旨の話までしている。

 これらを併せ考えると、本件契約は、その締結の勧誘に際し、AがXに対して、株取引についての助言という役務の提供に関し、その助言に従って株取引をしても必ずしも大きな利益が出るとはいえない不確実な事項について、700万円ほどの利益を得ることが確実であるとの断定的判断を提供し、その旨をXが誤信した結果、締結されたものであると認めるのが相当であるとして、Xは消費者契約法4条1項2号に基づいて、本件契約の取消しをすることができるとした。

 そして、XはYに対し、本件契約に基づいてYに支払った会費、登録料および成功報酬については、不当利得として返還を求めることができるとした。

 なお、上記約10万円の取引の損失については、Yに受益がないとして認めず、弁護士費用請求についても認めていない。

 また、選択的に主張した不法行為あるいは債務不履行による損害賠償については、投資助言が何らの価値のないものであったとは認められず、不法行為や債務不履行を生じさせる程度の強度の反社会性を有する態様のものではなかったとして違法性を否定している。



解説

(1)投資顧問業者

 投資顧問業者とは、金融商品取引法の投資助言・代理業(法28条3項)の登録(法29条)を受けて、投資顧問契約に基づいて助言を行うことを業とする者のことである。

 かつては、有価証券に係る投資顧問業の規制等に関する法律(証券投資顧問業法)によって規制されていた。登録業者による業務であるとはいえ、苦情は少なくない。

(2)金融分野における断定的判断の提供

 金融分野においては、勧誘をめぐる苦情が多数ある。その中でも、断定的判断の提供が問題となることが多い。

 これまでは、断定的判断の提供については不法行為を構成する違法要素の一つとして損害賠償を請求することがほとんどであった。

 損害賠償請求を認容した判決も豊富にあるが、説明義務違反や適合性原則違反など他の違法要素も認定されているものが多い。特に、商品先物取引の分野では、勧誘から取引終了までの全過程についての違法性を一体として評価・判断する、いわゆる一連の不法行為によって損害賠償請求をするのが実務なので、その傾向が強い。

 これに対して、証券取引の分野では、断定的判断の提供のみで不法行為を認定しているものも少なくない。この関係の最高裁判例としては、平成9年9月4日判決(『判例時報』1618号3ページ)がある。

 こうした判例の集積を受けて、金融商品販売法にも断定的判断の提供による勧誘を禁止する条項が盛り込まれ(法4条)、違反の場合には損害賠償責任があることが明確化された(法5条)。この場合、損害額と因果関係は推定される(法6条1項)。

 以上に対して、金融分野で断定的判断の提供を消費者契約法によって取り消した事案はごく少ない。

 特に、本件事案のように株取引で損をした経験のある者の場合は、断定的判断の提供があっても確実であると誤信したかどうかが問題となる場合が多い。その意味で、本判決は重要な先例といえる。

 しかし、その反面、不法行為責任を否定したことには問題が残る。

 なお、名古屋地裁平成17年1月26日判決(『判例時報』1939号85ページ)は、商品先物取引の2回の取引のうち1回分について断定的判断の提供によって取消しを認めたもの、大阪高裁平成19年4月27日判決(『判例時報』1987号18ページ)は、外国為替証拠金取引業者と顧客との和解契約について、断定的判断の提供によるものであるとして取消しを認めたものである。



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