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[2011年12月:公表]

結婚相手紹介サービス契約において、契約から約10カ月後のクーリング・オフが認められた事例

 本件は、結婚相手紹介サービス契約を、事業者との間で締結した消費者が、クーリング・オフを主張し、既払い代金の返還等を求めた事例である。

 裁判所は、契約書面の記載内容に不備があったとして8日経過後のクーリング・オフを認め、また、事業者が訴訟の不利益等を強調する書面を消費者に直接送付した行為について、不法行為に当たるとして5万円の慰謝料支払いを命じた。(大阪地裁平成20年5月9日判決)

  • 『消費者法ニュース』81号182ページ
  • 控訴棄却(確定)

事案の概要

被控訴人(原告):
X(消費者)
控訴人(被告):
Y(結婚相談業者)

 Xは、平成18年5月ごろ、Yが提供する結婚相手紹介サービスに入会し、Yと、同サービス提供契約を締結した(会員期間:1年間、金額:40万9500円、サービス内容:Xへの会員男性のプロフィール送付・Xのプロフィールの会員男性への送付・連絡先交換等)。

 Yは、平成18年5月23日、Xに対し、本件契約について契約書面を交付した。

 Xは、平成18年12月25日、Yに対し、電話で本件契約を解約する旨の意思表示をしたところ、Yは、これを受け、同日付で退会手続きを行った。

 Xが、代理人弁護士を通じて、平成19年2月6日、書面によりYに返金を請求したところ、同月19日までに、Yから、X本人に対して、返金を拒否する旨の書面2通が送付された。

 そこで、Xは、Yに対し、返金と慰謝料の支払いを求め、本件訴訟を提起した。

 また、消費者本人が既に電話による解約の意思表示はしていたものの、提訴の際に、本件訴状において、交付された契約書面には法定記載事項のクーリング・オフに関する事項、中途解約に関する事項、事業者の住所、契約締結担当者の氏名、契約締結年月日等の記載を欠いていることから、クーリング・オフ期間は経過していないとして、改めてクーリング・オフの意思表示を行った。

理由

クーリング・オフについて

 本件書面は、クーリング・オフおよび中途解約についての事項等、法定の契約書面に必要な記載に多数の不備があり、このような不備のある書面の交付によっては、クーリング・オフ期間の開始は認められないというべきである。したがって、本件契約についてのクーリング・オフ期間はいまだ開始しておらず、本件におけるXのクーリング・オフは有効である。

不法行為責任について

 Yは、X代理人弁護士による返金請求に対し、同代理人ではなく、Xに直接書面を送付しているところ、通常、紛争当事者間において、一方が代理人弁護士を選任し、他方当事者がそのことを知った場合、原則として当事者ではなく代理人と接触することが適当であると考えられる。そのうえ、本件では、X代理人は、書面において「ご回答、お問い合わせ等は当職ら宛にお願いします」と記載しており、したがって、Yとしては、Xとの直接の接触を避けるべきであったというべきである。

 それにもかかわらず、Yは、Xに直接書面を送付しているうえ、その書面の内容は「Xが返金を求める訴訟を提起した場合には、X自身が法廷で証言しなければならず、民事裁判は公開なので傍聴人に誰が来ても不思議ではなく、敗訴の場合にはYや、(Yが)Xに紹介した交際相手から訴訟を提起される可能性もある」などというもので、ことさらにXの不利益を強調する文言で、Xの権利行使を妨害しようとする意図に出た悪質な行為であるとの評価を免れない。

 Yの、Xに対する前記のような内容の書面送付は、紛争についての正当な交渉の範囲を逸脱した違法な行為というべきであり、本件契約を通じて、個人情報をYに提供しているXとしては、Yの行為により、権利を行使することに対する不安等を感じ、精神的損害を被ったと認められることから、Xに対する不法行為を構成する。

 そして、不法行為の態様が前記のとおり悪質なこと、およびXの個人情報をYが把握している状況等を考慮すれば、Xの精神的損害に対する慰謝料の額は5万円が相当である。



解説

 契約期間が2カ月を超え、契約金額が5万円を超える結婚相手紹介サービスは、特定商取引法に定める特定継続的役務提供に該当し、法律等で定めた記載事項がすべて記載された契約書面の交付を受けた日から8日を経過するまでは、クーリング・オフをすることができる。

 これまでも、契約書面が交付されてから8日を経過した事例におけるクーリング・オフの効果を巡って、多数の裁判例が積み重ねられてきた。

 それらの大部分は、訪問販売に関する事例であるが、法定記載事項については、厳格に解釈する傾向があり、法定記載事項について不備がある場合には、クーリング・オフ期間の起算日が到来していないとの判断のもとに、クーリング・オフの行使を有効と認める流れが定着していた。

 その理由としては、法定の契約書面の交付日を起算日としたのは、契約に関するすべての情報が開示された日を起算日とするものであること、書面交付は、消費者保護のための基本的な規制であり、容易に順守できること、違反に対しては、行政処分だけでなく直罰*規定があること、などが指摘されている。

 本件は、特定継続的役務提供についても同様の判断を示したものである。

 結婚相手紹介サービスは、消費者から個人情報を収集し、これを会員らに提供するという特殊なサービスであることから、消費生活相談・法律相談・弁護士への依頼・訴訟提起等をすることについて、紹介会員の個人情報の侵害に当たるとして禁止したり、消費者に損害賠償責任が発生するとして、消費者の正当な法律上の権利行使(契約勧誘の際の不実告知による取消権の行使、契約内容に沿った履行の請求、債務不履行による契約解除や損害賠償請求、クーリング・オフの行使等)を妨げる特約条項を用いたり、消費者対応を行うケースが見受けられる。

 消費者は、事業者にセンシティブな情報も含む個人情報を把握されているうえに、上記のような対応をされることによって、権利行使を実質的に制限される傾向がみられた。

 本件では、事業者によるこうした行為について、正当な権利行使を侵害するもので、不法行為に当たると判断しており、実務における参考になる。

 近年の婚活ブームに伴い、結婚相手紹介サービスのトラブルは増加傾向にある中、本件判決は貴重な事例であるといえよう。

  • * 違反行為に対して、直ちに罰金などの罰則を科すこと


参考判例

  1. [1]名古屋簡裁平成19年2月27日判決、兵庫県弁護士会消費者問題判例検索システム(電話勧誘販売による絵画の売買契約につき、契約書面の不備からクーリング・オフによる解除を認め、信販会社からの立替金請求について、抗弁の対抗が認められた事例(絵画レンタル商法)
  2. [2]大阪地裁平成18年6月29日判決、『消費者法ニュース』69号185ページ(絵画・ダイヤモンドの訪問販売につき、商品ごとの価格が記載されていないこと、クーリング・オフ条項の記載がないことから、法定書面に不備があるとして、クーリング・オフを認め、信販会社からの立替金請求を棄却した事例)
  3. [3]京都地裁平成17年5月25日判決、裁判所ホームページ(点検商法による次々販売につき、契約書にクーリング・オフの要件および効果の記載がなく、代金の支払方法として「ローン」との記載しかないこと等から、法定書面に該当しないとして、クーリング・オフの主張を認めた事例)
  4. [4]名古屋高裁平成20年9月10日判決、兵庫県弁護士会消費者問題判例検索システム、『月刊国民生活』平成22年11月号(訪問販売によるソーラーシステムの売買につき、契約書に商品の代金または役務の対価の支払いの時期等の記載がないとして、法定書面の不備を認めた事例)


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