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[2011年1月:公表]

契約して2カ月経過後にクーリング・オフが認められた事例

 本件は、ソーラーシステムの訪問販売について、交付書面に対価の支払時期、クーリング・オフに関する事項、担当者の氏名の記載がないこと、さらに取引方法にも問題があることを理由に、契約後2カ月を経過し、工事も完了した後に消費者が行ったクーリング・オフを有効と認め、権利の濫用(らんよう)に当たるとする事業者の主張を認めなかった事例である。(名古屋高裁平成20年9月10日判決)

  • 兵庫県弁護士会ホームページ
  • 確定

事件の概要

控訴人(原告):
X(信販会社)
被控訴人(被告):
Y1・Y2(消費者)
関係者:
A(販売業者、補助参加人)
B(販売業者)
C(Aの従業員)
D(Y1の代理人)

 Cは、平成17年11月5日、Yら宅を訪問し、Y2およびDに対し、太陽光発電システム、および、これを利用した調理器具、給湯装置等の販売勧誘をした。

 同月9日、Cらは、Yら宅を訪問し、従前の1カ月の光熱費をガス代8000円、電気代1万7500円の合計2万5500円と仮定した場合、太陽光発電システムを設置すると、1カ月で光熱費が約2万7000円以上、10年後で327万円、15年後で490万円、30年後で980万円節約になるなどとするシミュレーションを示した。そして「太陽光発電システムを取り付ければ、電気代の節約になる、同システムを利用してできた電力を売れば、電力会社から代金が払われる、電気の売却代金でローン代をほぼ賄える。すべての代金と設置費用の合計額は495万円になる」との説明をし、見積書を示した。

 同日、Y2およびDは、申込日を同日、商品の引渡日を同年12月初旬頃、商品(役務)名が太陽光発電システム、オール電化、数量1、役務提供あり、役務に関する別紙明細は無しとの記載がなされ、金額495万円、支払総額617万4419円で、毎月の支払額3万4000円余、平成18年1月から180回払い、保証受託会社をX、売買契約(商品等)の問い合わせ先として、販売店をB、代理店をAとする本件ソーラーローン契約書に自署押印した。

 同月11日、XからYら宅に、本件立替払契約、本件保証委託契約および本件連帯保証契約の意思確認のための電話があったが、その際、Y1は自宅におらず、CがY1に成り済まして電話に対応をしたと見られる。

 同月14、15日頃、Cは、Yら宅を訪問し、太陽光発電システムの本見積書を交付するとともに、DはY1の代理人として、日付が同月9日、システム内容を個人住宅用太陽光発電システム、機器代金と取付設置費用の合計額を495万円、工事着工日を同月27日、工事完了日を同月28日、電力会社との連系開始予定日を同年12月28日とし、請負者をAとする工事請負契約書の注文者欄にY1名義の署名、押印をした。

 Y2が、同月18日頃、Aの支店に出向き、本件2契約を取りやめると申し入れたところ、Cらは、翌日、Yら宅を訪問し、36万8000円の健康器具を前記契約のサービス分として33万8000円値引きして、3万円で販売すると提示して解約を思いとどまるよう説得し、Dは承諾した。

 その後工事が行われ、12月より一連の設備の利用ができるようになったが、Yらは、平成18年1月21日付書面をもって、本件2契約をクーリング・オフした。



理由

(1)書面不備について

 販売業者および役務提供事業者であるAは、本件2ソーラーシステム契約に際し、契約の申込者あるいは相手方に対して、特定商取引法4条、5条による申込書面、契約書面等の法定書面を交付しなければならず、これらの書面の交付がクーリング・オフの期間の起算点となる。

 本件、工事請負契約書には、商品の代金または役務の対価の支払いの時期、売買契約もしくは役務提供契約の申込みの撤回または契約の解除に関する事項、売買契約または役務提供契約の締結を担当した者の氏名の記載がなく、売買契約等の締結年月日は虚偽の期日が記載されており、法定の記載事項に不備があるものと認められる。

 前記事実に加えて、Xからの本件立替契約等に関する意思確認のための電話の際、CがY1に成り済まして対応をしたと見られることや、CらがY2らに対し、ソーラーシステム等の設置工事の具体的内容を十分に説明した形跡が窺(うかが)えないなど、Aの取引方法にも問題があると認められることを総合すれば、クーリング・オフの期間は進行せず、本件クーリング・オフの意思表示は有効と解するのが相当である。

(2)権利の濫用について

 Xらは、Yらが法定書面の不備を理由にクーリング・オフを主張するのは権利の濫用であると主張した。

 確かに、本件2ソーラーシステム契約にかかる設備は利用可能な状態にあり、Yらは、同設備の利用が窺われるものの、本件において、クーリング・オフの期間が起算されないのは、そもそも、Aが、義務づけられている法定書面の交付をYらにしなかったというA側の落度によるものであって、Yらによる本件クーリング・オフの意思表示が、契約あるいは履行の終了後、約2カ月を経過した後になされたこと自体については、Yらの責に帰すべき事由はないというべきであるから、Yらによる本件クーリング・オフの意思表示が信義に反し、権利の濫用に当たるとまでいうことはできない。



解説

 本事案は、訪問販売によるソーラーシステム等の契約締結から2カ月経過し、取付工事完了後に通知したクーリング・オフについて、契約書面に不備があったことから、クーリング・オフを有効と認め、クレジット会社からの請求を認めなかった事案である。

 書面の不備としては、[1]支払時期、[2]クーリング・オフに関する事項、[3]担当者の氏名、の3点の記載がなく、[4]契約締結年月日は虚偽、というものであり、極めて大きな不備である。

 ただし、形式的な書面の不備だけではなく、クレジット会社からの確認電話に販売員が消費者になりすまして対応した蓋然性(がいぜんせい)があることや工事内容の説明が不十分であったことなど、取引方法に問題があった点も合わせて考慮している。

 交付書面の記載内容に不備があるとして書面交付から8日を経過した後のクーリング・オフを認めた裁判例は少なくない。

 形式的な記載事項の不備のみを判決で指摘したものとしては、参考判例(1)などがある。権利の濫用に関して判断したものとしては、参考判例(2)・(3)・(4)がある。

 参考判例(2)は、ゴルフ会員権に関するものであるが、契約から15カ月経過後で、その間数回プレーを行っていたが、権利の濫用は否定した。

 参考判例(3)は、契約から8カ月後のクーリング・オフについて業者が代金の支払いトラブルの原因を作り出しており、販売業者の法律上の義務である特定商取引法5条書面の交付をしていないことなどから権利の濫用を否定した。

 参考判例(4)は、マット1枚、シート3枚の訪問販売について、契約書面等の交付が無かったことにつき、契約から約13カ月後の解除について、契約後引き渡しを受けて使用した商品については、離婚に伴う経済難を理由にしたクーリング・オフが権利の濫用に当たるとしたが、商品の引き渡しがされていないシート2枚についてはクーリング・オフを有効と認めた。

 なお、本事案では、信販会社が「クーリングオフの説明書き」を交付しているので、法定書面交付の要件を満たしていると主張したが、裁判所は、ローン契約書の交付日は、平成17年11月9日で、請負契約書の交付日は同月14日、15日頃であること、クーリング・オフの説明書きは、信販会社のカード案内や立替払契約等の説明が記載されたページと同一のページに記載され、クーリング・オフの意思表示の相手方が誰なのか必ずしも明確でないなど、ソーラーシステム契約に関するクーリング・オフの説明であることが一見して認識できる体裁にはなっていないことなどから、認めなかった。



参考判例

  1. (1)京都地裁平成17年5月25日判決、裁判所ホームページ
  2. (2)東京地裁平成6年6月10日判決、『判例時報』1527号120ページ
  3. (3)東京地裁平成6年9月2日判決、『判例時報』1535号92ページ
  4. (4)福岡高裁平成11年4月9日判決、未登載
  5. (5)東京地裁平成7年8月31日判決、『判例タイムズ』991号214ページ


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