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[2010年7月:公表]

中古車のメーター改ざんと重要事項の不実告知

 本件は、消費者が、中古車販売業者から自動車を購入したところ、当該自動車の走行距離が実際には約12万kmであったにもかかわらず、8万1500kmと表示していたとして、業者らに対し不法行為に基づく損害賠償または消費者契約法に基づく取消しを主張した事案である。

 裁判所は、販売業者のホームページおよび契約締結の際に、メーターは走行距離8万1500kmと表示しており、売買契約締結の際にもこれを明確に訂正したとは認められないことから、業者は実走行距離を消費者に告げていないとし、本件契約締結の際に不実告知があったとして、契約の取消しを認めた。(東京簡裁平成20年1月17日判決)

  • 兵庫県弁護士会ホームページ掲載
  • 確定

事件の概要

原告:
X(消費者)
被告:
Y1(中古車販売業者)
Y2(Y1の代表取締役)
関係者:
A(Y1 の従業員)

 Xは、2006年7月、中古車販売業者Y1から1997年式ステーションワゴンの中古車(本件車両)を代金合計110万円で購入した。

 本件売買契約当時、本件車両の実走行距離は、12万2000km以上であり、その事実をY2もAも知っていたが、当時のY1のホームページ上には、本件車両の走行距離が8万kmないしは8万1500kmと表示されていた。Xは、Y1のホームページを見ており、また、店舗で本件車両を見た際、そのプライスボードに走行距離が8万1500kmと表示され、走行距離計も同数値を示していた。

 Xは、中古車購入に際し、走行距離が10万kmを超えているか否かを重視していた。

 Xは、Y1店舗で本件車両を見た際に、走行距離に端数がないことについて感想を述べ、また、なぜ本件車両は他の展示車両に比べて価格が安いのか尋ねた。これに対してAは、他はターボ機能や付属品がついていたりする旨答えた。しかし、Aは、走行距離については積極的な説明はしなかった。

 以上の経過のもとで、Xは、本件車両の走行距離が約12万kmであることを知らず、約8万kmであると考えて購入したものであった。

 その後、Xは、本件売買契約について、実際の走行距離が12万kmであるにもかかわらず、約8万kmであるとの虚偽の説明をして契約させたものであり、Yらの行為は、詐欺による不法行為に当たる、予備的に消費者契約法の重要事項の不実告知に当たるので取り消すとして、損害賠償または不当利得の返還を求めた。

 これに対し、Yらは、売買契約締結の際、走行距離計が修理されていることを説明するなど、欺罔(ぎもう)行為はなかったとし、また、Xは、本件車両の走行距離が走行距離計と異なることを知ったうえで契約を締結したものであると主張した。



理由

 Y1は、本件車両の実際の走行距離が約12万kmであったにもかかわらず、ホームページでも店舗内のプライスボードでも走行距離を8万kmないし8万1500kmと表示し、本件売買契約締結に際してもこれを明確に訂正したとは認められないから、本件売買契約締結に当たり、Xに対し不実の告知があったというべきである。

 そして、Xは、走行距離が10万kmを超えないことを重視していたことが認められるから、本件車両の走行距離が約8万kmであることを信じたからこそ本件売買契約を締結したものと解される。Y1は、本件売買契約は本件車両の走行距離が不明との前提でなされたもので、Xもこれを了解していたと主張し、契約締結を証する注文書には、これに沿う記載がある。また、本件車両引渡しの際、Xに交付された同車両の保証書およびその際Xが署名した納車受領書にも、上記主張の事実をうかがわせる記載がある。

 しかし、本件車両の走行距離は約12万kmと分かっていたのであり、不明と変更しても事実を伝えたことにはならない。また、上記注文書がプライスボード等と異なる内容になっているのであるから、その作成の際これをXに対し明示的に説明すべきところ、AないしY2がその内容を説明した事実を認めるに足る証拠はなく、上記注文書によっても上記認定を覆すには足りない。さらに、上記保証書および納車受領書は、本件売買契約締結後に交付ないし作成されたものであり、その時点でXが本件売買契約の取消事由を知ったといえるか否かは別として、これらをもって直ちにXが本件売買契約締結時に本件車両の走行距離が不明であることを了解していたと認めるには足りない。

 以上によれば、本件売買契約は、Y1の不実告知により締結されたというべきであるから、消費者契約法4条1項1号による取消しが可能であり、Xのこの点に関する主張は理由がある。



解説

 本件は、中古車の走行距離メーターが改ざんされ、実際の走行距離よりも4万km以上少なく表示されており、これにより誤認して購入した消費者が、中古車販売会社と代表取締役に対して、詐欺に基づく不法行為ないし消費者契約法に基づく取消しを根拠に損害賠償ないし不当利得返還を求めたケースである。

 本件の特徴としては、ホームページ、展示場におけるプライスボードの表示、本件車両の走行距離メーターの表示がすべて約8万kmとする虚偽の表示が一貫してなされており、この数字を修正する具体的な数字を示した説明はなされていなかったこと、本件車両の実際の走行距離は12万kmを超えていた事実があること、中古車販売会社の代表取締役と従業員は実際の走行距離を知っていたこと、一方、売買契約締結後に消費者に交付された保証書と納車受領書には、「走行距離は不明である」とする趣旨の記載がなされており、消費者は、この書面に署名押印していること、などである。

 消費者契約法では、「消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次の各号に掲げる行為をしたことにより当該各号に定める誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。一 重要事項について事実と異なることを告げること。当該告げられた内容が事実であるとの誤認」と定めており、走行距離は重要事項に該当する。

 事業者は、勧誘の際には積極的に走行距離については説明していないが、ホームページ、本件車両のプライスボード、走行距離メーターの表示などに基づいて消費者が判断しているとの前提に立って、「注文書がプライスボード等と異なる内容になっているのであるから、その作成の際これを消費者に対し明示的に説明すべき」であるのに説明をしていないことをもって、重要事項の不実告知に該当するものとしたものであり、類似の事案の参考となる。

 なお、取消しに基づく清算については、自動車の売買代金および取消通知到達以後の遅延損害金の限度で認容した。消費者は、事業者は契約締結当時から取消事由があることを知っていたとして、民法704条の悪意の受益者に当たるとして売買代金受領時からの遅延損害金の支払いを求めたが、判決では、事業者は、消費者が走行距離不明であることを承知しているものと誤認していたものであり、取消事由を知ったのは、取消しの通知が到達した時点であるとの判断のもとに、上記の判断をしたものである。



参考判例

  1. (1)神戸簡裁平成14年3月12日判決、『消費者法ニュース』60号57・211ページ
  2. (2)東京簡裁平成16年11月29日判決、最高裁ホームページ
  3. (3)東京地裁平成17年1月31日判決、『国民生活』2007年3月号57ページ
  4. (4)神戸地裁姫路支部平成18年12月28日判決、兵庫県弁護士会ホームページ


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