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[2010年3月:公表]

ウェブサイトでFX取引の情報商材を販売する業者、そこから紹介を受けていたFX取引業者らに不法行為責任が認められた事例

 本件は、ウェブサイト(以下、ホームページ)で外国為替証拠金取引(FX取引)について「FX常勝バイブル」という情報商材を販売していた会社、同商材について「100%の勝率で、毎月25%以上の利益を得ていく方法」などと紹介していた同社取締役、同社の口座開設の紹介によって顧客を獲得していたFX取引業者らに対して、不法行為に基づく損害賠償を求めた事案である。

裁判所は、一連の顧客獲得行為自体が違法であるとし、また、同取引に関して誤った情報を提供したとして、業者らの不法行為責任を認容した。(東京地裁2008年10月16日判決)

  • 『消費者法ニュース』78号199ページ
  • 控訴後和解

事件の概要

原告:
X(消費者)
被告:
Y1(情報商材を制作・販売していた会社)
Y2(Y1の取締役)
Y3(FX取引業者)

 Xは、本件取引開始当時、21歳の大学生で、350万円程度の預貯金を有していたが収入はなく、本件取引以前に、外国為替証拠金取引を含め、投機取引の経験はなかった。

 Xは、2006年11月頃、Y1から配信されたメールマガジンを閲覧し、同社が開設していた「FX−外国為替証拠金取引 FX常勝バイブル ご提供ページ」というホームページを閲覧し、「FX常勝バイブル」の存在を知った。

 Y2は、同ホームページにおいて、「このページをご覧いただきたい方は、万全なリスクコントロールと、確立されたノウハウFXで、100%の勝率と、月間利益率25%以上を獲得して、一度きりの大切な人生を、お金にゆとりを持って過ごして行きたいと望む方です」「勝率100%&高利益率のエンサークル・トレードのノウハウ」「将来的にも、ロスカット*1は絶対に致しませんので資金の損失は発生しません」などとして、「FX常勝バイブル」を紹介していた。そして、200万円以上の預け入れをすることができる場合には、Y3での口座開設を勧めており、口座開設のためにY3のホームページへのリンクが貼(は)られていた。

 Y3におけるオンラインによる口座開設に当たっては、重要書類の確認として、PDF形式ファイルによる、「iFX Styleご利用マニュアル」「外国為替取引等に関する確認書」「外国為替取引約諾書」等を読んだうえ、これを「理解した」あるいは「同意する」をクリックする必要がある。

 Y3とY1との間では、「FX常勝バイブル」の読者が、「FX常勝バイブル」に記載されたリンクをたどり、Y3のホームページへアクセスし、そこから、

  1. 1.資料求をした場合、資料請求1件につき5000円(消費税別)、
  2. 2.資料請求後3カ月以内に口座を開設した場合、口座開設1件につき、1万5000円(消費税別)、
  3. 3.資料請求をせずに口座を開設した場合、口座開設1件につき2万円(消費税別)

を、Y3がY1に支払うという合意があった。Y3の顧客約3000〜4000名のうち約700名が、前記のような手順によりY1経由で口座を開設した者であった。

 Xは、外国為替証拠金取引を行い、結局184万8049円の損失を被った。そこで損害賠償請求を行い、5割の過失相殺のうえ認容したのが本判決である。

*1:損失拡大を防ぐための強制決済システム(いわゆる「損切り」)



理由

 Y2は、外国為替証拠金取引において、「100%の勝率」などということはあり得ないし、ロスカットをせずにじっくり待てば「為替差損のリスクは確実に回避することができる」などということもないのに「FX常勝バイブル」を紹介し、外国為替証拠金取引に関する誤った情報を提供し、Xに本件取引を開始させたのであるから、民法709条により、Xに対する不法行為責任が生じる。

 Y1は、そのホームページでY2の「FX常勝バイブル」の紹介を載せ、これを販売し、Y3から一定の金銭を受け取るなどして、外国為替証拠金取引に関する誤った情報を提供し、Xに本件取引を開始させたのであるから、民法709条によりXに対する不法行為責任が生じる。

 Xは、「100%の勝率と、月間利益率25%以上」などとうたうY1のホームページを閲覧し、「絶対にリスクがない」などという「FX常勝バイブル」に誘引されて取引を開始しているのであるから、Y3においては、その適合性について慎重に判断すべきであった。Y3は、「FX常勝バイブル」に記載されたリンクをたどってY3のホームページへアクセスし、口座開設等に至った場合には、Y1に対して一定の金員を支払っており、そのような方法により口座開設に至った者がY3の顧客3000〜4000名のうち700名程度に至っていたのであって、まさにY3は、Y1によるY3への口座開設までの誘引行為を利用していたのである。Y1による「100%の勝率と、月間利益率25%以上」との外国為替証拠金取引に関する説明は、断定的判断を提供するものであり、投資者の判断を誤らせるものである。Y3は、この誘引行為を顧客獲得の手段としていたのであるから、外国為替証拠金取引に関する誤った理解をしている者が申込みをしている可能性があることを認識していたはずであり、そうでなかったとしても少なくとも認識すべきである。それを前提にして、より慎重な説明や適合性審査をすべきであるのに、前記のような不適切な口座開設までの手順指導を容認し、さしたる適合性審査をするでもなく、本件取引を開始させたのであり、この一連の顧客獲得行為自体が違法である。

 ただし、Xにおいても、外国為替証拠金取引について、「100%の勝率」などということは通常考えがたいにもかかわらず、安易にこれを信じて取引を開始したことには大きな過失があるといわざるを得ず、その過失は5割と評価するのが相当である。



解説

 本件は、不招請勧誘が禁止されている店頭デリバティブとしての外国為替証拠金取引の広告・勧誘について、その違法性が認定されている点、そうした場合における適合性原則からの審査のあり方を論じている点、アフィリエイトの不法行為責任が認められた点などで、重要である。

 外国為替証拠金取引は年々増加しており、矢野経済研究所によると、2009年3月期の口座数は192万口座・預り証拠金残高は5951億円に達しており、2010年3月期は260万口座・7000億円に増加すると予測されている*2。円安の傾向が続いていたため利益を得る顧客が多かったという背景があるが、状況は一変し、急激な為替変動で相当の損失を被った顧客も多い。この取引は金融先物取引法によって不招請の電話・訪問勧誘が禁止されていたが、金融商品取引法の施行の際、東京金融取引所で行われる取引(くりっく365)については除外された。しかし、業者の大多数は店頭取引業者である。電話・訪問勧誘が禁止される場合、広告による宣伝と勧誘が重要になるが、本件は、欺瞞(ぎまん)的な広告・宣伝の例ということになる。

 Y1とY2の断定的判断の提供や誤った情報の提供の責任は明らかであるが、Y3の責任についての判断で、電話・訪問勧誘がない場合の適合性原則の審査のあり方について指摘している点は、ネット取引の場合の重要な先例と考えることができる。

 本判決は、Y3の責任の判断に力点を置いている。インターネット取引においては、アフィリエイトの責任が問題になる。

 アフィリエイトとは、ウェブサイトやメールマガジンなどで、広告元の企業サイトにリンクを貼り、そこを経由して広告を閲覧したり、商品やサービスを契約すると、一定の報酬がアフィリエイター*3に支払われるという広告手法である。

 本事案は、アフィリエイトについて、ホームページ上に企業等の広告を貼り付けた責任として、アフィリエイトとリンク先の企業(広告主)の双方に損害賠償請求を認めたもので、この種の問題の先例となる。

 他方、本判決は、「100%の勝率」などということは通常考えにくいにもかかわらず、安易にこれを信じたことは大きな過失であるとして、5割の過失相殺を行っている。投資取引においては過失相殺されることが多いが、過失相殺しない判決も少なくない。その面では、問題を残した。

*2:出所 (株)矢野経済研究所「FX(外国為替証拠金取引)の動向調査2009」(2009年8月21日発表)
*3:ウェブサイトやブログ内に広告(アフェリエイト)を掲載する人



参考条文

民法709条



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