[本文へ] 消費生活・消費者問題に関する事例や対処方法を紹介しています。

現在の位置 : トップページ > 相談事例・判例 > 消費者問題の判例集 > 易断に鑑定料または祈とう料の支払いを求める行為が、不法行為と認められた事例

[2009年10月:公表]

易断に鑑定料または祈とう料の支払いを求める行為が、不法行為と認められた事例

 本件は、易断・祈とうを行っている者に悩みを相談したところ、害悪を告知されて不安をあおられ、多額の金員を支払わされたとして、消費者が不法行為に基づく損害賠償を求めた事案である。

 裁判所は、易断につき鑑定料の支払いまたは祈とうその他の宗教的行為に付随して祈とう料の支払いを求める行為といえども、相手方の窮迫、困惑等に乗じ、ことさらにその不安、恐怖心をあおったり、自分に特別な能力があるように装い、その旨信じさせるなどの不相当な方法で行われ、その結果、相手方の正常な判断が妨げられた状態で、過大な金員が支払われたような場合には、社会的に相当な範囲を逸脱した違法な行為として、不法行為が成立するとした。そして、本件はその要件に該当し、不法行為が成立するが、慰謝料までは請求できないと判断した。(大阪高裁平成20年6月5日判決)

  • 兵庫県弁護士会ホームページ掲載

事件の概要

原告(被控訴人):X(消費者)
被告(控訴人):Y(易断・祈とうなどを行っている者)
関係者:A(Xの孫)

 X(大正15年生まれの女性)は、平成16年7月13日、Yの行う鑑定会に赴き、孫の悩み、親族や子どもとの縁が薄いことなどを相談した。Yはこの相談に対して、既に亡くなったXの母と夫が「○○(Xの名前)、来い。来い」と呼んでおり、今年中にXが死ぬと述べた。また、Xには男の子と女の子の水子がおり、男の子が右足にすがって、何で生んでくれなかったのと泣いていると述べ、Xの2人の子どもがひょっとしたら未亡人になるかもしれないと述べた(鑑定1)。

 これを聞いて不安に駆られたXに対し、Yは自分が平成18年11月5日まで水子の供養をしてあげるからと、200万円の支払いを要求した。Xは高額なのでびっくりしたが、不安に駆られ、Yが呼んでくれたタクシーに乗って、200万円を郵便局の貯金から引き出して支払った。

 平成16年8月2日、XはYから電話で呼び出され、孫のAとともに鑑定会をしているYのもとに赴いた。YはAに「占って進ぜよう」と声をかけ、親と縁が薄いとか、自分を良くしようと思うなら、東の方角を向いて毎日拝みなさいと申しつけたほか、「平成17年には良い職業に就ける。よい縁談がある。子どもは男の子と女の子2人で幸せに暮らせる。おばあちゃんに苦労をかけるなよ」などと話した(鑑定2)。このように10分ほど話をした後、YはXに対して「200万円です」と支払いを要求し、Xは要求されるまま、200万円を郵便局の貯金から引き出してYに支払った。

 Yは、この鑑定の4、5日後にもXに電話をかけ、「名前が悪いから印鑑をこしらえに出した。水牛の赤牛の角で、Xのところの分だけある。もう出してしまった。150万円を送金しろ」と申し出たが、Xはお金がないなどと言って、これを断った。

 その後、XはYに対して、Yの行為は違法なものであり不法行為を構成するとして、訴訟を提起することとし、それまでの支払額等約400万円と、慰謝料50万円および弁護士費用40万円の合計約490万円の賠償を請求した。



理由

(1)易断による鑑定料の支払請求等の行為の違法性(一般論)

「易断による鑑定料の支払いまたは祈とうその他の宗教的行為に付随して祈とう料の支払いを求める行為は、その性格上、易断や祈とうの内容に合理性がないとか、成果がみられないなどの理由によって直ちに違法となるものではない。しかしながら、それに伴う金銭要求が、相手方の窮迫、困惑等に乗じ、ことさらにその不安、恐怖心をあおったり、自分に特別な能力があるように装い、その旨信じさせるなどの不相当な方法で行われ、その結果、相手方の正常な判断が妨げられた状態で、過大な金員が支払われたような場合には、社会的に相当な範囲を逸脱した違法な行為として、不法行為が成立するというべきである」

(2)事例への当てはめ

1.鑑定1について

 本件鑑定1におけるYの言動は、Xにとって不吉な事実を次々と告げ、ことさらにXの不安をあおったうえで、Yが水子供養をすれば、Xやその子らに生じる害悪を取り除くことができるかのように装ってXをしてその旨信じさせ、正常な判断が妨げられた状態で、鑑定料もしくは祈とう料名の下に著しく高額の金員を支払わせたものであり、社会的に相当な範囲を逸脱した違法なものと言わざるを得ない。

2.鑑定2について

 本件鑑定2におけるYの言動についても、具体的な害悪の告知こそされていないものの、本件鑑定1の影響下から脱し切れていないXの、Yを信じたいという心情につけ込み、200万円という鑑定料としては著しく高額な金員を支払わせたものであって、これもまた社会的に相当な範囲を逸脱した違法なものと言わざるを得ない。

(3)賠償額

 Xは合計400万円を支払っておりこれが損害であるといえ、XはYから賠償額として合計30万円の支払いを受けており、損害金と遅延損害金からこれを控除した約400万円が支払われるべきである。また、弁護士費用として40万円の支払いが相当であるが、慰謝料については、財産的被害の回復によってその損害が填補されるものと認められ、慰謝料請求は理由がない。



解説

 これまで、関連する判例としては、宗教法人が信者に献金を勧誘する行為を不法行為と認めた判決(参考判例1)、いわゆる霊感商法といわれる、本人や身内の不幸の可能性を信じ込ませ、回避するために高額な壷(つぼ)などの購入をさせる行為を不法行為と認めた判決(参考判例2)がある。本判決は、祈とうなどの心霊的な行為を行うことが、場合によっては違法性を帯び、不法行為となることを認めた新たな判決であり、注目される。

 宗教的行為については、七五三やお宮参りなどのような習俗的な行為となっているものも含めて、必ずしも効用があることを信じて行うものではなく、また、金額も不相当に高額ではなく、さらには依頼者に心理的不安を積極的に駆り立てて依頼させるものでもなく、たとえ効用がなくても、不法行為になることはない。問題は、本件のような、宗教的というよりも占い師などの霊能力者による超能力・心霊的な行為に対して、占いをしてもらったり、祈とうをしてもらい報酬を支払うような事例である。合意の内容としても、必ず占いが当たることや、災いを払うことまでは確約されていないが、このような行為を行うにつき欺罔(ぎもう=騙すこと)の故意さえあれば不法行為になるのは当然である。しかし、事柄の性質上、霊能力のある祈とう師か、インチキ祈とう師かは容易に判断できず、後者の証明は本人が自分に霊能力があると信じているといわれればそれまでである。

 そのため、本判決が欺罔(ぎもう)の故意を問題にせず、

  1. 1.相手方の窮迫、困惑等に乗じ、ことさらにその不安、恐怖心をあおったり、自分に特別な能力があるように装い、その旨信じさせるなどの不相当な方法で行われ、
  2. 2.その結果、相手方の正常な判断が妨げられた状態で、
  3. 3.過大な金員の支払いを要求する行為

を不法行為と認めるものと評価してよいであろう。いずれにせよ、欺罔(ぎもう)の故意さえ証明できれば、2.3.は不要である。



参考判例

  1. 1.大阪高裁平成11年6月29日判決、『判例タイムズ』1029号250ページ。
  2. 2.福岡地裁平成11年12月16日判決、『判例時報』1717号128ページ。
  3. 3.神戸地裁洲本支部平成19年12月25日判決(本判決の第1審判決)、兵庫県弁護士会ホームページ。


消費者問題の判例集トップページへ

ページトップへ