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[2009年9月:更新]
[2009年9月:公表]

カプセル玩具誤飲事故で、製造会社に対し製造物責任が認められた事例

 本件は、当時2歳10カ月の男児が自宅で遊んでいて、カプセル入り玩具のカプセルが口腔内に入り喉のどを詰まらせて窒息、低酸素脳症による後遺障害が残ったことから、同児およびその両親が被告に対して、同カプセルには設計上および製造上の欠陥があったとして製造物責任法3条に基づき損害賠償を求めた事案である。判決では、同カプセルは幼児が玩具として使用することが予見され、口腔内に入ると窒息を引き起こす危険を有していたとして設計上の欠陥を認めたが、両親にも過失があったとし、損害の3割の限度で被告の損害賠償責任を認めた。(鹿児島地裁平成20年5月20日判決)

  • 『判例時報』2015号116ページ
  • 控訴

事件の概要

原告:X1(男児、当時2歳10カ月)、X2・X3(X1の両親) )
被告:Y(玩具メーカー、Aを吸収合併した会社でAの訴訟継承人)
関係者:A(事故のあった玩具入りカプセルの製造会社である玩具メーカー)
訴外:D(A社製のゲーム機を設置していた店舗を設けているスーパー)

(1)X1の母親であるX3は、平成14年8月9日、当時6歳の長男とともにDへ行き、同所に設置されたA社製のゲーム機の景品としてカプセルに入った玩具(本件カプセル玩具)を取得し、自宅へ持ち帰った。同長男、長女および事故当時2歳10カ月のX1は、本件カプセル玩具のカプセル(以下、カプセル)をボール代わりに遊んでいたが、同月10日夜、X1がカプセルを手に持って走り回っていたところ、カプセルを口に持って行った瞬間にカプセル全体がX1の口腔内に入ってしまった。それを見ていたX3がX1の口腔内からカプセルを取り出そうとしたが、手の入るすき間もなく取り出すことができなかった。そのため、119番通報をしたが、その間にX1は意識を失った。救急車が到着し、救急隊員が、カプセルを取り出そうとしたが、取り出せず、そのまま病院に搬送された。同病院でカプセルを取り出すことはできたが、窒息による低酸素脳症の後遺障害(身体障害者一級の認定、いわゆる寝たきり状態)を負った。カプセルは、専用ゲーム機でゲームをすると、カプセル入りの玩具がゲーム機内から取り出し口にスムーズに出てくるように、プラスチック製の二つの半球体を組み合わせたもので、直径は約40mm、ほぼゆがみのない球状をしており、空気抜きのための穴が一つ開いている。

(2)X1およびその両親であるX2、X3は、カプセルは2歳10カ月のX1の口腔内に容易に入りやすい大きさであり、表面上滑らかな直径40mmの球状というカプセルの特性および玩具として幼児が手に取って遊ぶという通常予見される使用形態からすると、カプセルには誤飲・窒息を引き起こす危険を有する設計上の欠陥がある。また、その欠陥について表示がないことは、表示上の欠陥にも当たるとして、製造物責任法3条に基づいて総額約1億8000万円の損害賠償請求訴訟を提起した。

(3)これに対し被告は、カプセルは玩具の包装容器であり、カプセルで遊ぶことは予定されていない、カプセルは合理性のあるST基準を満たしているとして、設計上の欠陥について争い、また、カプセル玩具内には、窒息の危険があるので口の中には絶対入れないこと、および3歳未満の子どもの誤飲の危険を表示した説明書兼注意書をカプセル内に入れており、表示上の欠陥もないとし、さらに製造物責任法4条1項の開発危険の抗弁も主張し、原告の主張に対し、全面的に争ったものである。



理由

(1)カプセルは直径40mmの球体であること、3歳未満の幼児でも最大開口量が40mmを超えることは珍しくないことからすると、カプセルは、3歳未満の幼児の口腔に入る危険性があり、口腔から取り出しやくするために球体ではなく角形や多角形とし、表面が滑らかでなく、緊急の場合に指や医療器具に掛かりやすい粗い表面とする、また気道確保のため、十分な径を有する通気口を複数開けておく等の設計が必要であった。
 以上から、カプセルは、3歳未満の幼児が玩具として使用することが通常予見される使用形態であるにもかかわらず、3歳未満の幼児の口腔内に入る危険、さらに1度口腔内に入ると除去や気道確保が困難となり、窒息を引き起こす危険を有しており、カプセルは、設計上通常有すべき安全性を欠いていたというべきである。また、ST基準を満たすことのみで、カプセルが幼児の窒息防止のための十分な安全性を有していたとは認められない。
 被告の開発危険の抗弁について、直径39mm以下のものは誤飲、窒息事故を引き起こすおそれがあることは、行政機関が発行する文書や民間団体が発行する乳幼児の救命手当てに関する文書に記載されている。その内容は広く知られた事実であり、カプセルをAが引き渡した時における科学または技術の知見によっては、カプセルに設計上の欠陥があったことを認識できなかったとは認められない。

(2)しかし、自宅内で原告の幼児の窒息事故を防止する注意義務は、一次的にはX1の両親であるX2およびX3らにある。X3らは、X1がカプセルで遊んでいるのを漫然放置し、十分な管理、監督を行っていたとはいえず、この点は被告の責任の範囲を判断するうえで大きな影響がある。Xらの損害のうち、Yはその3割を負担するのが相当である。Yは、X1に対しては、約2526万円、X2およびX3に対しては、それぞれ50万円を支払う義務がある。



解説

(1)本件は、いわゆるカプセルトイ(俗にいう「ガシャポン」や「ガチャガチャ」等)といわれる、球状のプラスチック容器のカプセルに玩具が入ったカプセルで遊んでいた幼児が、これを誤飲して窒息し、低酸素状態となり、高度の後遺障害を負ったことから、カプセルを製造した玩具メーカーの製造物責任が問われた判例である。本判例では、本件カプセルは、幼児が玩具として使用することが通常予見される使用形態における事故であり、本件カプセルを誤飲する危険性があるのに口腔内から取り出しやすくするため多角形にするとか表面を粗い面にする、あるいは気道確保のために通気口を複数開けておくといった安全設計がなされるべきであったのにそのような設計がなされていないとして、設計上の欠陥を認めたものである。

(2)しかし、本判例は、家庭内での事故については第一次的には親に注意義務があるとして、メーカーの責任を3割とし、7割の過失相殺をしている。確かに、本件のような窒息事故は、ピンポン玉を飲んでも発生するものであり、幼児の親の注意義務違反という面も相当程度あるとも考えられる。だが、本件カプセル玩具は、幼児等が使用することが予定されている玩具であり、本件カプセルを誤飲する危険性は予想できたものであり、メーカーとしてはその形状を変えたり、通気口を複数設けるなどすれば本件のような被害結果は回避できたものである。このように設計変更により深刻な被害結果を回避できるのにあえてこのような危険な製品を市場においた被告の責任は重大だというべきではなかろうか。本件は、本件カプセルで遊んでいる瞬時に生じたものであり、幼児がこれを異常使用しているのを放置していたような事案ではない。7割の過失相殺は厳し過ぎるのではなかろうか。

(3)なお、誤飲による窒息事故としては、いわゆるこんにゃく入りゼリーの判決がある。平成20年9月5日名古屋地裁で和解が成立したもの(訴額7482万円)や平成13年2月23日水戸地裁で和解が成立したもの(訴額5945万円)がある。
 また、玩具での判例としては、幼児用自転車のばり*により負傷した事件についての平成16年7月6日広島地裁判決(製造物責任を肯定)などがある。

*「ばり」…針状の金属片のこと



参考判例

広島地裁平成16年7月6日判決、『判例時報』1868号101ページ(販売会社に対して、ばりが発生するなどの注意事項について、指示・警告に欠陥があるとして、自転車製造会社に製造物責任が認められた事例)



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