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[2009年7月:公表]

ロコ・ロンドン貴金属取引の違法性

本件は、いわゆるロコ・ロンドン貴金属取引の違法性について争った事案である。裁判所は、本件取引は、偶然の事情によって利益の得喪(とくそう)を争うものというべきであり、賭博行為に該当し、その違法性を阻却(そきゃく)する事由を認めることはできないとして、その勧誘行為を行った従業員および役員らの共同不法行為責任を認めた(過失相殺なし)。(東京高裁平成20年10月30日判決)

  • 『消費者法ニュース』78号210ページ

事件の概要

X(被控訴人、原告):消費者
Y(控訴人、被告):(Y1)株式会社、(Y2〜Y5)役員等

(1)Xは、昭和16年生まれの女性で、本件契約当事、夫と死別して、年収300万円、相続財産が4500万円程度あったものの、先物取引はもちろん株取引の経験もなかった。

 Y1は、「ロコ・ロンドン貴金属取引」と称する顧客との取引を業務内容とする会社で、平成19年8月1日に解散し、清算手続中である。Y2はY1のインベスト事業部店長代理の肩書きを持つ従業員でXの担当者、Y3とY4はY1の代表取締役、Y5は事実上の最高責任者である。


(2)Y1の行っている取引のしくみの概要は、次のとおりである(本判決の認定による)。顧客がY1に対してロンドン渡しの金の現物を100トロイオンス(1トロイオンス=31.1035g)を1取引単位とする最低取引単位当たり50万円の「預託保証金」(Xとの取引では1単位を50トロイオンス、最低保証金を25万円)を支払ってロンドン渡しの金を売買したのと同様の(差金決済*を行う)地位を取得し、任意の時点で当該地位と反対の取引をすることによって生ずる(観念上の)差損益について差金の授受を行う取引で、金の現物を買主である顧客に交付することは当初から予定されておらず、Y1も市場との間で金を購入するわけでもない。そして、取引通貨が米国ドル(以下「ドル」と記す)建てで行われるため、差金決済においてはドルの為替レートにより円換算されることになる。また、取引の決済日までに反対売買による差金決済がない場合、決済日が自動的に1営業日延長され、以後も差金決済されるまで順次1営業日延長されるが、延長する場合に当該金の貸借により生じる金利の受け払いおよびドルの売買により生じる金利の受け払いと二者間の金利の差によって生じる利益または損失をスワップポイントといい、買建がある場合は1枚につき1日当たり500円の顧客からY1への支払いスワップポイントが発生し、売建がある場合は1枚につき1日当たり400円のY1から顧客への受け取りスワップポイントが発生する。


(3)Y2は、平成18年8月、Xに対し、「利息が少ない銀行に預けるよりよい配当が付くし、早くお金がたまる」などと勧誘し、Xにその旨誤信させて、Y1との間でロコ・ロンドン貴金属取引の契約を締結させて300万円を交付させたのを始めとして、次々とXに資金を追加させ、翌年5月までの間に合計4690万円を交付させた。この取引でXがY1から返還を受けたのは、合計895万円余りであり、その差額の約3794万円が損害となった。

 原審では、Xは、Yらに対し、損害賠償請求の訴えを出したところ、Yらが欠席したのでXの請求をいずれも認容する判決となり、Yらがこれを不服として控訴したのが本件である。

*差金決済:現物の受渡しをせずに反対売買による差額の授受で決済を行うこと



理由

 本判決は、本件ロコ・ロンドン貴金属取引について次のように判断し、損害額全額である3794万円余りと弁護士費用380万円の合計約4174万円とその遅延損害金の請求を認容した(過失相殺なし)。

(1)違法性
 本件取引は、Y1が提示する「ロンドン渡しの金の現物価格」および「ドル為替変動」を差金決済の指標とする差金決済契約である。売買差金の額は、顧客が買ったあるいは売ったとされる「ロンドン渡しの金の現物価格」を「ドルの為替レート」によって換算した額と顧客がその後に売ったあるいは買ったとされる「ロンドン渡しの金の現物価格」を「ドルの為替レート」によって換算した額との差額によって算出されるものであるし、「ロンドン渡しの金の現物価格」も「ドルの為替レート」も、Y1および顧客には予見することができないものであり、また、その意思によって自由に支配することができないものであるから、本件取引は偶然の事情によって利益の得喪を争うものというべきであり、賭博行為に該当する。

 そして、全証拠によっても、本件取引の違法性を阻却する事由を認めることはできない。

(2)Yらの責任
 上記のように、本件取引は賭博に該当し違法なものであるから、仮にXが本件取引のしくみやリスクを理解して本件取引を行ったとしても、Xを顧客として本件取引に勧誘してこれに引き入れた点において、その勧誘行為を行ったY2はもとより、Y3、Y4およびY5も意思の連絡があったと認められるので、民法719条1項の共同不法行為責任を負うというべきであり、Y1も民法715条の使用者責任を負う。

 そして、Xは、違法な本件取引について、Y2から十分に取引のしくみを説明されず、十分にそのしくみを理解しないまま、Y2に言われるままに金員を交付していることが認められるから、Xに賭博行為と知って加担したなどの不法原因があるということもできない。



解説

 本判決は、いわゆるロコ・ロンドン貴金属取引に関する高裁判決である。この取引は、業者が提示する「ロンドン渡しの金現物価格(ロコ・ロンドン金価格)」と「ドル円為替変動」を差金決済指標とする差金決済取引ということができる。この取引のしくみは、かつての外国為替証拠金取引とよく似ている。そればかりでなく、「利息が高い」などの勧誘も似ており、高齢者の被害が多いのも共通している。これは、(旧)金融先物取引法の改正(平成17年7月施行、平成19年9月の金融商品取引法の一部に再構成され、現在は廃止)で、外国為替証拠金取引に対して不招請勧誘の禁止や登録制度の導入などの規制がなされたことから、登録できない業者が新たに考え出した取引であるためである。

 この法改正前の外国為替証拠金取引については、多数の裁判が起こされ、判決も集積してきている。その多くは、勧誘の違法性のほか、賭博性などから取引のしくみの反公序良俗性や違法性を認定している。主な判決として、参考判例1〜5がある。

 ロコ・ロンドン貴金属取引についての高裁判決としては、参考判例6がある。この判決は、原告の請求を棄却した原判決を変更し、本判決と同様に賭博行為であるとして違法性を認めているものの、4割の過失相殺をしているという点で問題があった。本判決は、過失相殺をしないで請求を認めており、ロコ・ロンドン貴金属取引についての高裁判決として、大きな意味がある。

 なお、この種の取引については、特定商取引法の政令指定役務に指定され、平成19年7月15日から同法の規制対象になった。これによって、特定商取引法の訪問販売あるいは電話勧誘販売の要件を満たす場合には、書面交付義務やクーリング・オフなどを始めとする同法の規定が活用できることになる。しかし、指定役務の範囲や何がクーリング・オフの対象となるのか等について、分かりにくい部分もある。特定商取引法による対応は、法のすき間を埋めるためのいわば応急手当てである。そこで、産業構造審議会商品取引所分科会で、商品取引所法と海外商品市場における先物取引の受託等に関する法律の見直しが審議され、平成20年12月18日に報告書が取りまとめられた。この報告に基づく改正法案が平成21年3月3日閣議決定され、通常国会に上程された。法案が成立し施行されれば、本件のような取引は店頭商品デリバティブ取引に該当し、商品先物取引業者の許可なく行うことはできなくなるので、注意が必要である。



参考判例

  1. 1.札幌高裁平成17年6月23日判決、『先物取引裁判例集』40号487ページ
  2. 2.東京地裁平成17年11月11日判決、『判例時報』1956号105ページ
  3. 3.東京高裁平成18年9月21日判決、『金融・商事判例』1254号35ページ
  4. 4.岡山地裁平成18年11月9日判決、『先物取引裁判例集』46号377ページ
  5. 5.東京地裁平成19年1月24日判決、『先物取引裁判例集』47号323ページ
  6. 6.東京高裁平成20年3月27日判決、『消費者法ニュース』76号265ページ


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