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[2009年5月:公表]
本件は、証券業の登録を受けていない業者による未公開株の販売が詐欺的商法に当たるとして、購入者が、業者に対して購入代金相当額および弁護士費用を損害賠償として請求した事案である。裁判所は、購入者は業者の行う違法な詐欺的商法によって販売価格がその価値に見合うものであると誤信して本件未公開株を購入させられたと認められるとして、取締役らの任務懈怠(けたい)責任を認めた。 (東京地裁平成19年11月30日判決)
Aは、証券取引法(現金融商品取引法)による証券業の登録を受けずに未公開株の勧誘・販売を行っていた。Y1はAの代表取締役で、未公開株の仕入れを担当していた。Y2はAの取締役で、営業本部長であった。
XはBから、Aの取り扱う未公開株について、「上場されない会社はごくわずか」「上場されれば、最低でも購入価格の倍以上になる」「1年後に確実に当たる宝くじを買うようなものだ」などと言われて購入を勧誘され、B自身とBの親族も多数の銘柄を購入していたことからこの言葉を信用し、Aから次のとおり未公開株を代金合計2220万円で購入した。
本件取引に際して、BはXに対しF'株式は平成18年3月頃に、そのほかの会社の株式は約半年後に上場予定であると説明している。
F'の株式は平成18年11月20日に名古屋セントレックスに上場されたが、上場初値は11万1000円で公募価格の19万円を下回った。
それ以外の株式は、今日まで上場されず、Dは、平成18年9月1日にH株式会社に事業譲渡のうえ、解散決議をして清算手続き中であり、これらの未公開株はいずれも換価困難な状態にある。
そこでXは、A社の展開していた取引を詐欺的商法によるものだとして、Yらに対し、共同不法行為ないし少なくとも取締役としての監視義務を怠ったことに重大な過失があるので旧商法266条の3に基づいて損害賠償請求を求めた。
Xの主張に対して裁判所は、次のように判示して請求を認容した。
登録を受けずに証券業を営むことが3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金またはこれらの併科という罰則(証券取引法198条11号)をもって禁じられていること、証券業の登録を受けた会社であっても、証券業協会の規則(「店頭有価証券に関する規則」および「グリーンシート銘柄に関する規則」)により、未公開株の一般投資家に対する投資勧誘は、「店頭有価証券に関する規則」6条および8条に定める場合のほか、発行会社の法令順守状況を含む社会性、適時開示体制の整備状況、財務諸表または連結財務諸表に係る公認会計士または監査法人の監査報告書において重要な注記がないこと等および事業計画に収益性・成長性が認められること等を条件として指定されるグリーンシート銘柄に限られ、それ以外の未公開株の一般投資家への投資勧誘は禁じられていることからも明らかなように、わが国の証券取引制度においては、経営状態に関する適切な情報開示のない会社の株式は、証券取引業の対象とすべきでないものとされている。
Aがあえて違法な無登録営業として株式の販売を行ったこと、特にそれがグリーンシート銘柄でもない正当な価格に関する情報を得にくい未公開株であること、結局、本件未公開株は、1社を除いては上場されず、上場された株もXの買受価格を大幅に下回る価格で推移しており、本件取引におけるXの投下資金の大半は回収不能となっていること、法制度上、経営状態に関する適切な情報開示のない会社は証券取引業の対象とすべきでないものとされていることなどを総合して案ずれば、後述のとおり、Aの代表取締役または取締役として同社の営業に関与していたと認められるYらとしては、本件未公開株の販売価格が正当なものであったことを積極的に証明しない限り、本件取引当時における本件取引未公開株の正当な価格は、もともとその代金額を大きく下回るものであり、その販売価格は、顧客がそれを正当な価格であると誤信することを前提とした詐欺的商法によるものであったことが推認されるというべきである。
そして、Y1は、Aの代表取締役であったことを認めており、上記のような同社の違法な詐欺的商法を主導していた者というべきであるので、旧商法266条の3の責任がある。
また、Y2は、Aの営業本部長の肩書きを持つ取締役であったので、Aの未公開株販売が詐欺的商法であることについての認識がなかったとは考えられず、万一その認識がなかったとしても、それを認識し是正しなかったことに重大な過失があるから、旧商法266条の3に基づき賠償する義務を負う。
未公開株商法という場合の未公開株とは、取引所に上場されていない株式であって、店頭でも取引されていない株式のことである。これを勧誘しているのは、無登録で証券業を行っている会社である。この商法に関しては、被害が多発しているので、これまでの判決を一括して紹介する。なお、もともと違法な営業であるから、会社は破綻(はたん)する危険性が高いか、既に破綻してしまっている場合が多いので、相談の際には速やかな対応が必要であるから注意されたい。
参考判例1は、取締役に対する旧商法266条の3(違法な職務行為に対する監視義務違反、現在は会社法429条)による損害賠償請求を認容したもので、公開を予定していないとか、譲渡制限がある株を公開で値上がりが見込めるとか、価値評価が困難な未公開株を高い価格で売りつけていたことから、詐欺的な取引であると認定している。
参考判例2は、担当従業員に対して不法行為責任を認めたもので、実際の価格よりも極めて高額で売りつけるに際して、上場時期を告げて上場すれば倍になるなどの勧誘を行うのは違法であるとする。
参考判例3は、会社・代表者・担当者を被告とした事案であるが、勧誘の事実が虚偽であり詐欺行為であるとして、被告らの不法行為に基づく損害賠償責任を認めた。
参考判例4は、取締役に対して旧商法266条の3の責任を認めたもので、証券取引法違反であり勧誘も違法であるとした。
参考判例5は、会社・代表者・担当者を被告とする事案で、上場されるので必ず利益になるなどの勧誘が虚偽であるなどとして不法行為、使用者責任、会社法429条1項などにより損害賠償義務があるとした。参考判例6・7も同様であるが、証券取引法等の規定を潜脱する違法行為であることを強調している。
参考判例8は、会社について使用者責任(民法715条)、代表者について会社法429条1項の責任を認めたもので、上場するとの勧誘が虚偽であったこと、無登録証券業であることなどを理由とする。
参考判例9は、無登録業者による未公開株売買は、それ自体違法性が高く、公序良俗違反の違法行為であるとしたものである。
参考判例10は、業者の未公開株の買い付けの勧誘について、断定的判断の提供を認定して消費者契約法による取消しを認めたものである。