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[2008年5月:公表]

太陽光発電システムの勧誘につき不実告知および不利益事実の不告知が認められた事例

 本件は、訪問販売で太陽光発電システムの勧誘をするに際し、オール電化機器類を無償サービスで付ける旨等の説明を受けて契約したものの、実は、太陽光発電機シスム代金および無償サービス品設置工事費用が通常よりも高額であり、太陽光発電機システムの発電能力の説明も誇大だったという事案である。裁判所は、事業者の勧誘は消費者契約法による重要事項の不実告知および不利益事実の不告知に該当するとして契約の取消しを認め、事業者に対し、設置済みの機器類の撤去を求める原状回復を命じた。(神戸地方裁判所姫路支部平成18年12月28日)

  • 兵庫県弁護士会ホームページ掲載
  • 請求棄却・控訴後和解

事件の概要

X:太陽光発電機販売業者(原告)
Y:消費者(被告)
A:太陽光発電機システムのメーカー
B:Xの販売員

 Bは、平成16年12月19日、Y宅を訪問し、Yの妻に対し、A社の太陽光発電システムを街に普及したいので、オール電化機器類が付くモニターになってほしい旨勧誘し、同月25日に再訪する約束を取り付け、それまでにY方の1年間の電気・ガス代等の概要を説明できるよう準備してほしい旨伝えた。Bは25日に再訪し、Y夫婦に対して本件勧誘を行った。Bは本件IHクッキングヒーターおよびヒーター用の鍋等の希望小売価格の記載のあるメーカーのパンフレットを交付し、現在特別にこれらのオール電化機器類をサービスで提供できる旨を説明したうえ、あらかじめYらが用意していたY方の光熱費平均2万3500円という数値をもとに、上記を設置した場合、ガス代がかからず、電気代も節約でき、これらにより月1万3200円光熱費が減少すること、食器洗い機を設置することにより月3000円の水道代の節約が見込まれること等を説明した。さらに、本日中に契約すれば、国から14万400円の補助が受けられること、A社のシステムは他のメーカーよりも割高であるが、それは発電効果がよいことや架台がしっかりして屋根が傷む心配が少ないこと、特別に20年保証を付けられることなどを説明し、Y方に最適な太陽光発電システムを設置すると、1カ月481キロワット相当、売電額にして1万2200円相当の発電が見込まれる旨説明した。Yらは、それでも工事代金が高額であるため契約締結を躊躇(ちゅうちょ)したが、Bは今日中に返事をもらわなければならない旨回答し、Yは浴室乾燥機をサービスで付けるよう求め、Bはクッキングヒーター用の鍋を省く代わりに浴室乾燥機をサービスで提供する旨返答した。契約に際し、Bは「工事契約書」の控えを交付したが、契約書には施工条件として上記オール電化機器の品番の記載はあるが、本件システムにかかる機器や付属品の単価、工事内容、諸経費の内訳とその価格などの記載は一切なく、総額453万600円のみ記載されていた。Yらは、本件設置工事の後に、本件契約が割高ではないかと疑い調査したところ、X社以外の事業所の標準価格の平均は218万円程度であるとの情報を得、さらに本件オール電化機器類の設置工事のみを事業者に依頼すると133万円程度要するとの情報を得た。そこで、Yらは消費生活センターに相談したり、Xと交渉したりしたが、結局本訴に至った。



理由

 Yらは、本件工事代金について月3万円以上のクレジットとしてこれを15年間にわたって支払うという高額な商品ないし役務提供であることを大前提として、どの程度経済的メリットがあるかに関心を持ち続けていたことが優に認められ、このような関心にかかる事実は消費者契約法所定の誤認対象事実と認めるべきものである。このような説明を受けたYらとしては、本件工事代金がA社の太陽光発電システムとして標準的な価格であることを前提に、本件オール電化機器類が無償でサービスされることそれ自体に経済的なメリットがあること、および本件システムとオール電化機器類の設置による光熱費・水道代等の節約がクレジット代金の支払いを考慮してもなお経済的なメリットがあることなどの事実を本件契約の重要な事実として考慮して本件契約に至ったというべきであり、これらの点について誤認があり、かつそれがBの勧誘文言上重要事実を告げなかったものであることは明らかであるというべきである。

 加えて、本件システムにかかる発電能力についても、Bは不実の告知をしたと言わざるを得ず、当該不実は、本件システムを導入することによる経済的メリットに直接かかわる事実であることは明らかである。

 この点、仮に本件工事代金が本件システムを取り扱う他の事業者の標準的価格と本件オール電化機器類の標準的設置価格との合計額と大差なく標準的価格に収まっているものであり、太陽光発電システム単独でみても一般に行われている取引価格の枠内に収まっていたとしても、Yらは、本件システムと本件オール電化機器類の総合的価格を考慮して本件契約締結に至ったものではなく、Bの勧誘文言から、本件システムがA製の太陽光発電システムとして標準的な価格であることを当然の前提であることを認識したうえで、本件オール電化機器類が無償でサービスされることそれ自体に経済的メリットがあると判断して本件契約に至ったというべきであるから、前記のような点をもってしても、Yらが重要事項について誤認していなかったものと解することはできない。



解説

 本件は、消費者契約法に基づき誤認による契約の取消しを認めた事例である。訪問販売により太陽光発電システムの勧誘をするにあたり、IHクッキングヒーターおよびヒーター用の鍋等(オール電化機器類)をサービスで付ける、クレジット手数料が加算されても総合的に電気代、ガス代などの節約になるなどと強調して説明し、消費者にその旨を信用させて契約を締結させた事例である。消費者は、太陽光発電システムの価格とオール電化機器類の設置工事費用は通常の価格であり、オール電化機器類は無料サービスなのでその部分が経済的に得になると認識して契約していたが、実際には、太陽光発電システムの価格は業界内の上限価格で、オール電化機器類の設置工事費用も業界の通常価格よりも高額で、契約金額は「すべてを有料で契約する場合の業界での相当金額」であった。この点について、消費者は、重要事項の不実告知、また、オール電化機器類を無料サービスすると利益となることを説明しながら、販売対象商品の価格等が通常よりも割高となっていることを説明しなかったものであり、この点が不利益事実の故意による不告知に該当すると主張していた。また、特定商取引法の取消事由にも該当すると主張していた。判決は、重要事項の不実告知および不利益事実の故意による不告知に該当すると認定して、契約の取消しを認めた。特定商取引法の取消事由にも該当すると結論しているが、消費者契約法の取消事由との違いは明確にしていない。

 消費者は、事業者からの工事費用等の支払い請求訴訟に対して、取り付けられていた本件商品すべてを撤去して原状回復するよう反訴提起していた。判決では、契約の取消しを認め、事業者からの工事代金の支払い請求を棄却し、消費者からの原状回復(事業者負担による設置物の撤去)を認容した。事業者が控訴したが、控訴審では原審判決と同趣旨の和解が成立している。

 消費者契約法の不利益事実の故意による不告知は、要件として先行行為「重要事項に関して消費者にとって利益となる事実を告げていること」が必要とされていることなどから、判例が乏しい。本件は、数少ない不利益事実の不告知を認定したものとして参考になる。

 なお、本件訴訟では主張されていないが、本件は訪問販売であり、交付書面の記載内容も不備なので、実務上はクーリング・オフによる解決が最も確実かつ効果的であると思われる。



参考判例

  1. 1.神戸簡判平成14年3月12日、『消費者法ニュース』60号57・211ページ(3カ月後の月謝の値上げを告げなかったことが不利益事実の不告知に当たるとした事例)
  2. 2.大阪簡判平成16年1月9日、『国民生活』’07年1月号64ページ(パソコン内職の収入に関する不利益事実について故意の不告知が認められた事例)
  3. 3.大阪高判平成16年4月22日、『消費者法ニュース』60号157ページ(ファッションリングの価格について不実告知が認められた事例)
  4. 4.東京簡判平成16年11月29日、最高裁ホームページ(中国人消費者に対するクレジットの支払額について不実告知が認められた事例)
  5. 5.東京地判平成17年1月31日、『国民生活』’07年3月号57ページ(資格予備校の役務内容について不実告知が認められた事例)


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