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[2007年10月:公表]

パチンコ攻略情報の売買契約の取り消し

本件は、パチンコ攻略情報の売買契約に際して、売り主が「100%絶対に勝てる」などと勧誘し、買い主がこれを真実と誤認して67万円余りを情報料として支払ったという事案である。裁判所は、売り主の勧誘は消費者契約法4条1項2号所定の「断定的判断の提供」に該当するとして、売買契約の取り消しを認めた。(東京地方裁判所平成17年11月8日判決)

  • 『判例時報』1941号98ページ
  • 原判決取り消し・請求認容(確定)

事件の概要

X(原告、控訴人):消費者
Y(被告、被控訴人):パチンコ攻略情報販売業者(個人)
A:Yの従業員

 Xは、平成15年頃から交際していた男性とともに月1回くらいの割合でパチンコ店に行くことがあった。その際Xは、1万円くらいの利益を得ることはあっても損をしたことはなく、3000円くらいの支出で5万円くらいの利益を得ることもあった。

 Xは、パチンコ雑誌を購入し、掲載されていた「一本の電話がきっかけで勝ち組み100%確定」「情報料無料で完全伝授」などの広告を見た。広告中の「○田の一言」の欄には「こういったカムフラージュをすることにより、わざと負けているフリを見せる。つまりホールの店員&一般パチンカーの目を欺く動きを行うのだ。その後は指定台で、協議会の情報を使い上限を守り稼ぎましょう」との記載があり、これを信用したXは、平成16年7月15日、広告に掲載されていたYの電話番号に電話をかけ、Aに対し、そんなにパチンコで稼げるものなのか、広告には絶対100%勝てると書いてあるがそれは本当なのか、手順というものがあるらしいがそれは誰にでもできるものなのかなどと尋ねた。Aは、「誰にでもできる簡単な手順、70歳のおばあちゃんでもできるほど簡単」「100%絶対に勝てるし、稼げる。月収100万円も夢ではない」「お店1店につき滞在時間は約2時間で、平均5万円から8万円勝てる」「パチンコ攻略情報代金は数日あれば全額回収できる」などと勧誘し、打ち方の内容は書面に残すと秘密がほかに流れてしまうので書面で送ることはできない、パチンコを打ちに行くときに電話をくれれば、手順と行くべきお店、パチンコ台の機種および台の番号は口頭で伝えるなどと答えた。Xは、これを信じて契約を締結し、40万5000円を振り込んで支払った。ところが、XがYから提供を受けた情報は、難易度の高い特殊な技術を必要とするもので、パチンコ台の釘(くぎ)の状態に大きく左右されるものであり、同月17日から29日にかけてXは、情報どおりの手順で何度も試みたが成功しなかった。

 Xは、29日にAに抗議し、もっと簡単な手順はないのか聞いたところ、「契約期間が長いほど提供する情報は、手順が簡単かつ効果が高く、手早く、一回当たりでも大きく稼げる」と勧誘した。Xはお金がないと言ったところ、「本当は60万円かかるんだけど、まだ始めたばかりということもあるし、差額26万2500円でできるようにしてあげますよ」と勧誘したので、Xは契約し支払ったが、前回の情報よりもさらに難易度の高い特殊な技術を要するものであり、何度も試みたもののまったく成功しなかった。

 本件の争点は、Yの勧誘は断定的な判断の提供に当たり、Xはその勧誘により誤信して契約を締結したかどうかである。

理由

 本件広告には、「一本の電話がきっかけで勝ち組み100%確定」などの広告記載があり、同広告の「○田の一言」という欄の記載など、広告の読者において、Yが一般には知られていない特別なパチンコ攻略の情報を有しており、読者がそれに従えば確実に利益を生み出すことができると思わせる内容になっていた。またAは、本件広告に関心を持ち、その内容の真偽を問い合わせてきたXに対し「誰にでもできる簡単な手順、70歳のおばあちゃんでもできるほど簡単なもの」「毎回3000円から5000円で大当たりが引ける」「100%絶対に勝てるし、稼げる。月収100万円以上も夢ではない。めざせ年収1000万円プレーヤー」「お店1店につき滞在時間は約2時間で平均5万円から8万円勝てる」「パチンコ攻略情報代金は数日あれば全額回収できる」などと将来の出球による利益が確実であるという趣旨の言葉を用いた。

 さらにAは、Xに対し、手順の内容の秘密が一般に広まることのないよう、情報はすべて口頭で伝えると述べて、あたかもYの伝える情報が一般には知られていない特別なものであり、それによってXが将来、利益を確実に獲得できるかのごとき印象を与えた。

 以上を総合すると、本件広告における前記表現およびAのXに対する前記の勧誘は、本来予測することができないYがパチンコで獲得する出球の数について断定的判断を提供するものといえる。

 Xは本件契約締結前に数回パチンコをして利益を得たことから、パチンコによって利益を出せる場合があることは認識していたといえるが、一方で、XがAに対し、本件広告記載の100%稼げるという内容が本当であるか尋ねていることからみて、Aの勧誘を受ける前には、Xは、パチンコで常に利益を獲得する方法があることに対しては半信半疑の思いを抱いていたことが認められる。したがって、前記のとおり、Aによる確実な利益を約束する言葉を用いた勧誘およびYが提供する情報が特別のものであるということの強調により、Xは、本件広告の記載内容を含めたYによる前記断定的判断の内容が真実であると誤信したと認めるのが相当である。

解説

 消費者契約法では、業者が契約の勧誘に当たり、「物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものに関し、将来におけるその価額、将来において当該消費者が受け取るべき金額その他の将来における変動が不確実な事項につき断定的判断を提供すること」により「当該提供された断定的判断の内容が確実であるとの誤認」をさせて契約を締結させた場合には、契約を取り消すことができるものと定めている(4条1項2号)。断定的判断の提供に関する裁判例は少なく、本判決のほかには、下記の参考判例の商品先物取引、内職商法、易学契約に関するものなどがあるにとどまっている。

 パチンコによって利益が得られる可能性は、本判決でも指摘しているとおり複合的な要因によって左右される偶然性の高いものである。したがって、パチンコによって100%稼げるという勧誘は、文字どおり解釈すれば「断定的判断の提供」に該当する可能性がある。しかし、一方でパチンコはギャンブルの一種であるものの、パチンコ台の管理や操作等の人為的要素により左右されまったくの偶然に頼るものとは異なることから、どのような場合に断定的判断の提供が認められ得るかが問題となる。本件事件のポイントは、第一にギャンブルの一種であるパチンコについても断定的判断の提供が認められるか、それはどのような場合かが問題とされ、具体的な事実認定に基づいて判断が示された。第二は、消費者は広告を見て問い合わせ、業者は広告の情報を前提として勧誘を行った場合の広告と勧誘との関係をどのようにみるのかという点であった。

 第一については、判決では、消費者が当初は半信半疑で問い合わせを行っていること、これに対して業者がさまざまな勧誘文言を用いて、情報提供契約によって提供された情報に基づいてパチンコを行えば確実にもうかること、その方法は70歳のおばあちゃんでもできるほど簡単な手順であることなどについて、繰り返し具体的に説明し誤信させたことを詳しく事実認定して、断定的判断の提供に当たると認定した。一見するとギャンブルなどのリスクの高いものであっても、勧誘方法や勧誘の内容などによっては断定的判断の提供に該当する可能性があることを示した事例であり参考になる。

 第二については、勧誘の際に広告内容を前提とした勧誘を行っていることから、本件広告の記載内容を含めたYによる断定的判断の内容が真実であると誤信したと認めるのが相当と判断した点が参考になる。

参考判例

(1)名古屋地判平成17年1月26日『消費者法ニュース』63号100ページ(商品先物取引について断定的判断の提供による取り消しを認容)、(2)神戸地判尼崎支部平成15年10月2日未登載(易学の契約について断定的判断の提供を肯定、ただし控訴審の大阪高判平成16年7月30日兵庫県弁護士会ホームページでは「断定的判断の提供は財産的なものに限る」として否定された)、(3)東京簡判平成16年11月15日未登載(内職商法の事例で断定的判断の提供による取り消しを認容)、(4)名古屋地判平成19年1月29日未登載(パチスロ攻略法につき断定的判断の提供を認めた事例)などがある。