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[2007年7月:公表]

英会話教室の中途解約時の清算

 本件は、英会話教室が中途解約の際に、契約締結時の単価よりも高額な単価で清算すると定めている規定の効力を争った事案である。裁判所は、当該清算規定は、特定商取引法49条2項1号に定める法定限度額(解約料の上限)を超える額の金銭の支払いを求めるものに当たり無効であると判断し、中途解約時の提供済み役務対価相当額は契約時単価によって算定された使用済みポイントの対価額と認めるのが相当であると、英会話教室の主張を斥(しりぞ)けている。(最高裁判所平成19年4月3日判決)

  • 判決文未登載・裁判所ホームページ掲載
  • 上告棄却

事件の概要

X(原告、被上告人):消費者
Y(被告、上告人):英会話教室

 Yにおいて授業を受けるためには、あらかじめ、Yの定めた料金規定に従った受講料を支払い、ポイントを登録して受講契約を締結しなければならず、受講者は、1ポイントにつき1回の授業を受けることができる。受講料は、登録ポイント数に応じて定められる各ポイント単価に当該登録ポイント数を乗じた額とその消費税相当額を合算した額とする。

 受講者が受講開始後に受講契約を解除(中途解約)した場合の受講料等の清算について、(ア)受講者に対し、受講料等の受領金の総額から、受講者が解除(中途解約)するまでに使用したポイント(使用済みポイント)の対価額、中途解約手数料等を控除した残額を返還する。(イ)使用済みポイントの対価額は、使用したポイント数に、本件料金規定に定める各登録ポイント数のうち使用したポイント数以下でそれに最も近い登録ポイント数のポイント単価を乗じた額とその消費税を合算した額とする。ただし、その額が、使用したポイント数を超えそれに最も近い登録ポイント数の受講料の額を超える場合には、その受講料の額とする。(ウ)中途解約手数料は、受領金の総額から使用済みポイントの対価額等を控除した残額の2割に相当する額とする。ただし、その額が5万円を超える場合には、5万円とする。

 Xは、平成13年9月13日、Yに対し、料金規定に従った受講料75万6000円を支払い、600ポイントの登録をして受講契約を締結した。Xは、平成16年7月30日、Yに対し、本件契約を解除(中途解約)する旨の意思表示をしたが、同日までに386ポイントを使用していた。なお、本件解除(中途解約)に伴う清算において、本件使用済みポイントの対価額について契約時単価を用いて算定した場合の中途解約手数料は、5万円となる。

 Xは、本件清算規定は特定商取引法49条2項1号に違反し無効であり、本件解除(中途解約)に伴う清算において受領金の総額から控除される本件使用済みポイントの対価額は、その契約時単価の1200円に使用したポイント数の386を乗じた額とその消費税を合算した48万6360円であると主張して、Yに対し、その対価額を前提として算定された清算金の支払いを求めた。これに対し、Yは、本件使用済みポイントの対価額について、本件清算規定に従って算定すべきであり、本件使用済みポイントの対価額は、65万1000円であると主張した。原審判決は本件清算規定は特定商取引法に反するもので無効であると判断したためYが上告した。



理由

 (特定商取引法49条1項および2項の)各規定の趣旨は、特定継続的役務提供契約は、契約期間が長期にわたることが少なくないうえ、契約に基づいて提供される役務の内容が客観的明確性を有するものではなく、役務の受領による効果も確実とはいえないこと等にかんがみ、役務受領者が不測の不利益を被ることがないように、役務受領者は、自由に契約を将来に向かって解除することができることとし、この自由な解除権の行使を保障するために、契約が解除された場合、役務提供事業者は役務受領者に対して法定限度額しか請求できないことにしたものと解される。

 本件料金規定においては、登録ポイント数に応じて、一つのポイント単価が定められており、受講者が提供を受ける各個別役務の対価額は、その受講者が契約締結の際に登録した登録ポイント数に応じたポイント単価、すなわち、契約時単価をもって一律に定められている。本件契約においても、受講料は、本件料金規定に従い、契約時単価は一律に1200円と定められており、Xが各ポイントを使用することにより提供を受ける各個別役務について、異なった対価額が定められているわけではない。そうすると、本件使用済みポイントの対価額も、契約時単価によって算定されると解するのが自然と言うべきである。Yは、本件使用済みポイントの対価額について、本件清算規定に従って算定すべきであると主張する。しかし、本件清算規定に従って算定される使用済ポイントの対価額は、契約時単価によって算定される対価額よりも常に高額となる。本件料金規定は、契約締結時において、将来提供される各役務について一律の対価額を定めているのであるから、それとは別に、解除(中途解約)があった場合にのみ適用される高額の対価額を定める本件清算規定は、実質的には、損害賠償額の予定または違約金の定めとして機能するもので、上記各規定の趣旨に反して受講者による自由な解除(中途解約)権の行使を制約するものと言わざるを得ない。そうすると、本件清算規定は、役務提供事業者が役務受領者に対して特定商取引法49条2項1号に定める法定限度額を超える額の支払いを求めるものとして無効と言うべきであり、本件解除(中途解約)時の提供済み役務対価相当額は、契約時単価によって算定された対価額と認めるのが相当である。



解説

 特定商取引法49条1項は、英会話教室等の特定継続的役務提供契約が締結された場合、役務受領者は、クーリング・オフ期間の経過後には、将来に向かって契約の解除(中途解約)を行うことができる旨を定め、同条2項1号は、解除(中途解約)が役務提供開始後である場合、役務提供事業者は、役務受領者に対し、損害賠償額の予定または違約金の定めがあるときにおいても、提供済み役務対価相当額と解除(中途解約)によって通常生ずる損害の額として政令で定める額を合算した額に、これに対する法定利率による遅延損害金の額を加算した金額を超える額の金銭の支払いを請求することができない旨を定めている。解除(中途解約)によって通常生ずる損害の額として政令で定める額は、特定継続的役務の場合は5万円または解除(中途解約)された契約に係る役務の対価の総額から提供済み役務対価相当額を控除した額の100分の20に相当する額のいずれか低い額とされている。

 本件は、600ポイントの契約で契約時単価は1200円であったが、中途解約の際には、契約時単価ではなく、提供済み回数が最も近い300ポイントの単価1750円で清算し、常に契約時単価よりも清算時単価のほうが高くなるしくみを採っていた。契約時単価で計算すると48万6360円だが、Yの定めた清算方法では65万1000円であった。

 従来から、契約時単価よりも清算時単価が高額となる清算規定の有効性が争われ、Yは一貫して合理性があると主張したが、下記参考判例はいずれも合理性がなく契約時単価と異なる清算時単価の約定は法の趣旨に反するもので無効であると判断してきた。本件判決は、この点に関する初の最高裁判決である。判決では、契約時単価よりも清算時単価が常に高くなる約定は、特定商取引法では契約期間内であれば消費者に中途解約の自由を保障すべきことを定めているにもかかわらずこれを制約することになると指摘し、契約時よりも単価が高くなっている部分は損害賠償の予定ないし違約金として機能しているものと評価し、特定商取引法の「解除によって通常生ずる損害の額として政令で定める額」の規制に反するものであり無効と判断した点に特徴がある。特定継続的役務提供の清算方法で、契約時単価よりも高額な提供済み役務の清算方法を定めている業者はY以外にも多数あり、本件最高裁判決の影響は大きいと考えられる。



参考判例

 以下の判決は、いずれもYの中途解約時の清算規定について特定商取引法違反と認定したものである。

  1. 東京地判平成17年2月16日(本件第一審、『判例時報』1893号48ページ)
  2. 東京高判平成17年7月20日(本件原審、『判例タイムズ』1199号281ページ)
  3. 東京高判平成18年2月28日(判例集未登載)
  4. 東京地判平成16年7月13日(『判例時報』1873号137ページ)
  5. 京都地判平成18年1月30日(裁判所ホームページ)
  6. 大阪高判平成18年9月8日(判例集未登載、京都地判の控訴審)
  7. 名古屋地判平成19年2月5日(朝日新聞に紹介記事あり)


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