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[2007年1月:公表]

パソコン内職商法の事案において、信販会社に対する既払金返還請求が認容された事例

本件は、パソコン内職商法の事案において、販売業者がクレジット契約締結の媒介行為をしたことを前提に、販売業者が積極的に勧めたクレジット契約は、購入物品を利用することにより収入を得て、その収入によりクレジット代金を支払うことが勧誘の主要な内容になっているのであるから、その収入がいくらであるかは、消費者契約法4条4項2号にいう「その他の取引条件」であり、同条2項にいう「重要事項」であるとして、この重要事項についての不利益事実の不告知を理由に、クレジット契約の取り消しを認め、信販会社に既払金全額の返還を命じた事例である。(大阪簡易裁判所平成16年1月9日判決)

  • 判例集未登載
  • 請求認容(控訴後和解)

事件の概要

X:原告(消費者)
Y:被告(信販会社)
A:内職業者
B:Aと密接な関係にある内職あっせん業者
C:Aの販売担当者

 Xは、平成14年6月初め、Aの担当者Cから電話勧誘を受けた。その内容は、教材を購入し資格を取得し、Bの適性試験に合格すれば業務委託契約に基づきパソコン内職を紹介するというものであった。Xは電話の度に怖いからしませんと断ったが、Cは「ちゃんと聞いてください」と何度も電話をかけてきた。

 Cは、「教材の購入が絶対の条件でこの教材で勉強して資格を取得しないと仕事の紹介はできない。パソコン初心者でも月5万円の収入がある、あなたは知識があるから、それ以上の収入がある。月10万円を目標にしてください。教材費の一括負担は無理だろうからクレジットを利用してください。私どもの契約会社を利用してください。月1万7000円の返済を5年、収入の中から支払えば半分以上は手元に残り、皆さん、2年から2年半で完済されています。あなたの場合は1年くらいで返済できます。次々に仕事があり消化しきれずに困っています。引き落としは11月末にしますから、それまでに合格すれば最初から収入で支払えます。何歳になっても、辞めますと言わない限り仕事を紹介します」などと勧誘した。

 Xは、以上の話を信用して、平成14年7月8日、本件売買契約とクレジット契約を締結した。契約締結経過は以下のとおりである。

 同日昼過ぎAから契約書類が送られてくると、時間を置かずにCから電話があり、クレジット契約書面については説明がないまま、契約書類を4時過ぎに宅配業者に取りに行かすので早く書くよう言われた。契約書の役務記載欄にはすでにCが記入していた。クレジット契約書面は指示どおり宅配業者に渡した。契約に必要な保険証もAの経理係にファクシミリで送った。その後、Yから電話があり、名前、住所、電話番号、生年月日、現在ほかに組んでいるローンがあるか、商品名、金額の確認をされた。

 Xは、平成14年10月12日に資格取得、12月13日に適性試験に合格、平成15年1月から内職を始めたが、1月6590円、2月2万3590円の収入しかなく、3月、4月は合計2万9100円分の仕事しか提供されないうえ支払いもされていない。最後の仕事は5月で、以後はABともに電話に出なくなり、書面不備によるクーリング・オフの通知は転居先不明で戻ってきた。  Xは、クレジット契約を消費者契約法5条により取り消し、Xが弁済することによりYの得た利得金81万2294円について返還するよう求めた。



理由

(1)本件クレジット契約媒介の委託およびAによる媒介行為について

 Cは、勧誘の当初からクレジットの利用を前提に教材購入を勧め、クレジットの支払いは、教材を購入して資格取得後に紹介する内職による収入によって賄うことを勧誘の内容としている。また、割賦代金はBが行うパソコン指導料込みの金額であり、しかも本来別々であるはずの指導料と月額割賦代金は同額である。契約締結段階においても、分割支払回数、支払金額、支払期間など契約の重要な部分についてあらかじめCが記入したものをXに郵送し、数時間後に契約書面を返送するための宅配便まで用意し、契約書類および付属書類はすべてAを通じてやり取りされている。

 これらの事実によれば、本件売買契約と本件クレジット契約および内職の紹介は、本件においては密接不可分の関係にあり、しかも、Cの本件クレジット契約に関するこれらの行為は申込書の受領という枠を超えて、契約締結自体の媒介行為と認められる。

 YとAとの間には委託契約関係があったこと、YとAとの委託契約関係がクレジット申込書の受領ということにとどまるという証拠は存しないことなどを総合的に考えると、YA間にクレジット契約の締結について媒介することの委託関係があり、同委託に基づいて、Cが、本件クレジットの締結を媒介した事実が認められる。

 本件クレジット契約締結時、YからXに名前や住所などの確認の電話があったこと自体は、Cが本件クレジット契約締結の媒介行為をしたことを否定する事実とはならない。

(2)消費者契約法4条2項の行為と誤認について

 本件においては、クレジットの利用を媒介者が積極的に勧め、クレジット契約による購入物品を利用することで収入を得、その収入によりクレジット代金を支払うことが勧誘の主要な内容になっているのであって、その収入がいくらであるかは、消費者契約法4条4項2号にいう「その他の取引条件」であるから、同条2項にいう「重要事項」である。

 Cが、電話勧誘の当初から多額の教材購入代金を理由に断るXに対し、クレジットによる購入を勧誘し、パソコン初心者でも最初から5万円の収入があり、Xであればそれ以上の収入があるから、その収入からクレジット代金を支払っていけること、仕事は確実にあると、Xの利益になる旨を告げ、月々5万円の収入を満たさない内職の紹介しかしないという不利益な事実を告げなかったこと、認定事実および弁論の全趣旨からAとBの密接な関係が認められ、CはBの内職紹介が月々5万円の収入に満たない程度のものと知っていただろうと推認されること、前記不利益な事実を告げなかったことにより、Xがそのような不利益事実はないと誤認したと認められるから、本件クレジット契約は、消費者契約法4条2項により取り消し得るものである。



解説

 本件は、業務提供誘引販売取引に関し、内職業者が倒産し行方不明となったことから、消費者がクレジット契約を消費者契約法により取り消して、既払金返還を求めた事案である。

 消費者は、クレジット契約締結後に金利が高いことから、内職業者からなされた「仕事はたくさんあるから、確実に収入が得られる」との説明を信用して、数回分割金の引き落としがされた後に繰り上げて一括弁済していたために、被害金額が商品の割賦販売価格全額の81万円以上にも上ったという事情がある。

 信販会社の言い分は次のようなものであり、この種の事案での典型的な主張である。(1)業務提供誘引販売取引であることを信販会社は知らなかったものであり単なる教材の売買契約に関するクレジット契約に過ぎない、(2)Yは内職業者に対してクレジット申込書の事務の受け付けについての代行を委託していたがクレジット契約締結についての媒介の委託はしておらず、内職業者がクレジット契約の勧誘をした事実もない、(3)Xはクレジット契約自体についての誤認はしていない、(4)信販会社は内職業者が勧誘の際に消費者契約法4条1項1号、2号に該当する行為をしたことは知らない。主な争点は(2)および(4)である。

 (2)について、消費者契約法5条は「前条の規定は、事業者が第三者に対し、当該事業者と消費者との間における消費者契約の締結について媒介をすることの委託をし、当該委託を受けた第三者が消費者に対して同条第一項から第三項までに規定する行為をした場合について準用する」と定めるところ、本判決は、クレジット契約締結までの手続きの流れを詳細に事実認定し、加盟店が、信販会社から委託を受け、クレジット契約の締結について勧誘を行う際に契約締結の媒介を行ったものと認定した。なお、信販会社が消費者に対して電話確認を行っていること自体は、内職業者の行為がクレジット契約締結の媒介行為に当たるとする判断を否定する理由にはならないとの指摘は当然であるが、判決においてこの点が明確化された点は評価できる。

 (4)について、本判決は、業務提供誘引販売取引で、仕事をすることにより得られる収入から物品購入の支払いに充てることができることが勧誘の主な内容になっていることから、得られる収入は消費者契約法4条4項2号の「その他の取引条件」に該当すると判断した。クレジット契約における「重要事項」が、立替金、手数料、支払方法などに限定されるか、販売する商品や業務提供利益・特定利益などのその他の取引条件なども該当するかについては見解の対立がある。本判決は、業務提供誘引販売取引に関するクレジット契約につき業務提供利益が重要事項に該当すると判断したもので、この点においても実務上参考となる貴重な判決である。

 また、本判決は、月5万円以上の収入が確実に得られる旨説明し、それに満たない内職しか紹介しないという不利益を知りつつ告げなかった点が不利益事実の不告知に該当すると判断しており、類似の事案処理の参考となる。なお、この点は、断定的判断の提供に該当する可能性も考えられよう。

 本件は、信販会社が控訴し、控訴審で信販会社が消費者に対して金30万円を支払う旨の和解が成立して決着している。



参考判例

 業務提供誘引販売の要件について判断した判決として、

  1. ・名古屋地方裁判所平成14年6月14日判決(月刊『国民生活』2002年11月号掲載文

 クレジット契約の消費者契約法による取り消しが認められた事例として、

  1. a 5条により契約媒介者による不実告知を認めた判決
    ・東京簡易裁判所平成16年11月29日判決(学習教材の訪問販売事案・TKCデータベース収録)
  2. b 4条1項の不実告知を理由とする取り消しを認めた判決
    ・佐世保簡易裁判所平成17年10月18日判決(化粧品の訪問販売事案・判例集未登載)
  3. c 4条2項の不利益事実の不告知を理由とする取り消しを認め、既払金返還請求も認容した判決
    ・小林簡易裁判所平成18年3月22日判決(悪質住宅リフォーム事案・判例集未登載)
  4. d 4条3項の退去妨害を理由とする取り消しを認めた判決・東京簡易裁判所平成15年5月14日判決(絵画の展示会商法事案・『消費者法ニュース』60号213ページ)
    ・札幌地方裁判所平成17年3月17日判決(宝石の展示会商法事案・『消費者法ニュース』64号209ページ)
    ・名古屋簡易裁判所平成17年9月6日判決(呉服の訪問販売事案・判例集未登載)


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