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[2006年12月:公表]

インターネットオークションで購入した中古車の瑕疵(かし)担保責任

本件は、インターネットオークションで落札・購入した中古の普通乗用自動車に、出品者がオークションサイトに記載していなかった損傷があった事案である。判決は、それ以外の損傷の存在は明記されていて、かつ価格も低廉なこと等からすれば、本件中古車には、記載された損傷以外にも修理を要する個所が存在することが予想される、この予想の範囲内の損傷については買い主が自ら修理することが予定されているとした。しかし、自動車の走行それ自体に危険をもたらすガソリンタンクのガソリン漏れについては、民法570条の「隠レタル瑕疵」に当たるとして、その修理費用相当額の損害賠償請求を認容した。(東京地方裁判所平成16年4月15日判決)

  • 『判例時報』1909号55ページ
  • 原判決変更・請求一部認容(確定)

事件の概要

X(原告):買い主・落札者(消費者)
Y(被告):売り主・出品者(消費者か事業者か不明)

 X(オークション初心者)は、インターネットオークション上で、Yが本件中古車(アルファロメオ164)を開始価格8000円で出品しているのを見つけ、平成15年7月11日、6万4000円で落札した。購入に際し落札代金のほか、搬送費用およびオークションシステム料等として5万2845円をXが負担することが予定されていたため、XはYに対し合計11万6845円を支払った。

 Yは本件中古車を出品したオークションのサイトに車両の写真を掲示して、その仕様などを説明していたほか、次のようなコメントを掲載していた(一部略)。

「(1)ご覧のとおりのアルファ164です。右、前バンパー、フェンダーに擦り傷があります。それと、左、前後ドアに薄く10円傷があります。それと、左、リアドアノブにひびが入っています。しかし、エンジン、エアコンなど機関は良好です。気になる電動ファンもキッチリと回りますので大丈夫です。(2)先日バッテリーを付け替えたところです。(3)出品物がお車ですので、それぞれ見方、取り方が違うと思いますので低年式、中古車だということにご理解頂ける方のみ入札してください。ご理解頂けない方の入札、ご遠慮頂けますようお願い致します。(4)今日、昼の暑い時間に乗りましたがエアコンはよく利いておりました。ですが、左リアフェンダーのトランクリッドとの接点の部分に小さな塗装はげを見つけました。」

 しかし搬送されてきた車両には、サイトで指摘された損傷以外に、1.ガソリンタンクのガソリン漏れ、2.センターマフラーの欠落、3.電動ファンのさび、4.ショックアブソーバーが機能しない、5.タイヤの劣化、6.左リアノブが割れて外からドアが開けられない、7.右ウインカーの欠落、8.運転席ドアがきちんと閉まらないといった損傷があった。

 そこでXがYに対して民法570条の瑕疵担保責任(注)に基づく損害賠償を求めたのが本件である。

 Xは1.から8.の損傷は車両の走行に重大な支障を生じさせるもので、民法570条の「瑕疵」に当たると主張した。しかしYは、本件車両は同種の中古自動車価格が80万円ないし100万円であることに比べ極めて低廉な価格で落札されたものであるから、本件損傷程度の瑕疵は入札者の自己責任の範囲内であって、民法570条の「瑕疵」には当たらないと主張した。原審は、これらの損傷の程度は落札価格に照らして許容すべき範囲内のものと考えられ、民法570条の瑕疵に当たらないとして請求を棄却したため、Xが控訴した。



理由

 民法570条の「瑕疵」とは、売買の目的物が通常備えるべき性能等を備えていないことをいうが、本件のような中古自動車の売買においては、それまでの使用に伴い損傷などが生じていることが多く、これを修復しないで売却する場合には、修理費用を買い主が負担することを見込んで売買代金が決定されるのが一般的であるから、買い主が修理代金を負担することが見込まれる範囲の損傷などは、これを当該自動車の瑕疵というのは相当でない。

 サイトでは本件損傷については記載されていないが、それ以外の損傷の存在が明らかにされていて、かつ、初心者に対し入札に際して注意を促し、むしろ入札を控えるようにとコメントしていると、本件車両は、オークションでの開始価格が8000円、落札価格が6万4000円にとどまるところ、年式、車両の状態等によって価格が左右されることを考慮しても、その落札価格は極めて低廉なものであったと解されることなどに照らせば、本件車両は、サイトで指摘された損傷以外に修理を要する損傷個所が存在することも予想されたうえで開始価格が設定されて出品され、かつ、サイトの指摘以外の損傷が実際にあったとしても、落札者が自ら修理することを予定して落札されたものであった。

 したがって、本件車両に民法570条の「瑕疵」があるというためには、前記予想ないし予定を超えた損傷が存する場合であることを要するというべきところ、本件損傷2.ないし8.は、これらの損傷によって車両の走行それ自体が不可能であるとも、危険を伴うとも解されないから、Xが自ら修理することを覚悟していて当然というべき範囲内の損傷であると認められ、サイトに記載がなかったとしても、これをもって、本件車両の瑕疵ということはできない。

 しかしながら、本件車両は、低年式の中古車であって、損傷個所が存在するとはいえ、サイトにはその走行自体が不可能であるとか、危険を伴うといった記載はなく、かえって、走行それ自体には問題がないかのような記載がされていたのである。その見地から損傷1.についてみると、ガソリンタンクのガソリン漏れは、その程度が相当のものであったと認められ、そのようなガソリン漏れが生じている自動車では、引火の危険性などからして安全な走行それ自体が困難であることは明らかであるから、そのような状態は、本件車両の落札価額の低廉さ、サイトの記載を考慮しても、前記した予想ないし予定を超える損傷であったといわなければならない。したがって、少なくとも本件損傷1.は、民法570条の「瑕疵」に当たる。(約78万の請求に対し、1.修理のための3万円のみ認容)



解説

 インターネットオークションも売買契約であり、民法570条の瑕疵担保責任、すなわち売買目的物に欠陥等があった場合の売り主の責任は発生する。ネットオークションは一般消費者も出品するので、瑕疵担保責任の追及により売り主たる消費者が予期せぬ責任を負う可能性がある。一方、買い主たる消費者としては瑕疵担保責任を追及したい。ここで問題となるのは、「中古品」として個人により出品されたという事実が、どの程度、瑕疵担保責任を排除するのか、また出品価格の高低によって瑕疵担保責任の有無・程度が影響を受けるのか、ということである。法的には、(1)このような状況下で、当該欠陥等が瑕疵担保責任を根拠づける「瑕疵」と評価されるか、(2)瑕疵担保責任免除特約が存在するか、というかたちで表れる。本件は(1)の判断枠組みで主張・検討されている。

 個人が自己使用の物品を修理等することなく売る場合、当然使用に伴う損耗や不具合は想定される。売り主が事業者であれば、断りのない限り修理や確認を期待できるが、個人の場合は難しい。問題はどの程度までが買い主の責任かである。特に当該中古品の市場価格に比して非常に安価な場合は、買い主が修理費用を負担し、その分低価格にする趣旨であると理解できるが、ここでも程度・範囲の問題は存在する。

 本判決は上記の売り主の負担軽減を認め、価格がかなり低廉なこともあって、ドアの開閉の不具合を含む損傷につき「瑕疵」と認めなかったが、普通自動車の基本性能である「走行すること」については安全性も含め、たとえ低廉な価格の中古品でも備えるべき性質として、瑕疵になるとしている。

 本件では売り主がサイトで、走行には問題がないような記述をしたことも瑕疵と評価する根拠となっている。基本性能は他の物品についても当てはまる瑕疵判断基準である。売り主としてオークションに出品する際に自己の責任を排除するためには、基本性能についても担保できない旨を明示する必要がある。

 このほかインターネットオークションは、さらに、(1)相手が特定できない、(2)目的物を確認できずサイト上の説明に依拠するしかない、という問題がある。結局買い主はサイト上の情報と価格を頼りに物品の品質を想定するしかない。しかし(3)入札方式なので通常は市価より低廉であるため、低価格が即責任排除につながるとも言い切れない、という難しさがある。トラブルの際は、サイト上の説明、価格、出品者とのやり取り(メール、電話等)をすべて勘案する必要があるので、これらの記録を残すことも重要である。



参考判例

 本件の原審として、東京簡判平成15年10月8日(『金融・商事判例』1231号61ページ)。業者間自動車オークションによる瑕疵ある自動車についての、仲介店の損害賠償責任を否定したものとして、大阪高判平成15年7月11日(判例集未登載・LEX/DB インターネット収録)がある。

注:瑕疵担保責任とは
 民法は、売買の目的物(本件では中古車)に隠れた瑕疵(欠陥・通常備えるべき性能等を備えていないこと)があり、買い主がこれを知らず、かつ知らないことに過失がない場合に、買い主が瑕疵の存在を知ったときから1年以内であれば、損害賠償を認め、さらに、瑕疵のために契約をした目的を達することができないときは、契約の解除を認めている(570条)。これが、売り主の瑕疵担保責任である。
 なお、瑕疵担保責任は任意規定であるから、当事者間の契約において、売り主の責任を免除することも可能である。ただし、この場合であっても、売り主が知りながら告げなかった事実について、売り主はその責任を免れることができない(572条)。



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