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[2005年12月:公表]

ヤミ金融に対する元本相当額を含む弁済金全額の返還が認められた事例

 本件は、貸金業法に定めのある登録貸金業者が、出資法5条所定の利率を大幅に上回る年利1200パーセントという超高金利の貸し付けをした事案である。判決は、この貸し付けが、違法行為の手段に過ぎず、民法上の保護に値する財産的価値の移転があったとは評価できないとして、元本相当額を含む弁済額全額の返還を認めた。(札幌高等裁判所平成17年2月23日判決)

  • 『消費者法ニュース』63号38ページ

事件の概要

X(原告・控訴人):消費者
Y(被告・被控訴人):ヤミ金融業者

 Xは、平成14年当時、北海道、札幌市内の病院に看護師として勤務していたが、複数の金融業者から高利の借り入れを重ねていた。その返済に窮していた3月頃、電信柱の広告でYを知り、3月14日、Y事務所において借金の申し込みをした。Yは、Xの身上・勤務先等についてXから聴取したうえで、その日のうちに、Xに対し2万5000円を貸し付けた。その際、返済期限はXの給料支給日の同月25日とし、返済金額を5万円と定め、返済方法は持参払いとし、また、返済予定日の前日には、XからYに対し電話で連絡すべきことを要求した。

 Xは、平成14年3月14日から平成15年1月31日までの間に、15回にわたり合計58万5000円をYから借り入れ、この期間中に、10回にわたり合計108万9000円を支払った。Yは、貸金業法に定める登録貸金業者であるにもかかわらず、Xとの取引において所定の契約書面や領収証等の交付をしなかったばかりか、Xから受領した金額は、出資法5条所定の利率を大幅に上回る超高金利の金額であって、同法において刑罰の対象とされるものであった。Yによるこれらの貸し付けは、それを呼び水にしてXから法外な超高金利による多額の金員を受領することを目的とするものであって、金銭消費貸借契約に名を借りた悪質な犯罪行為であり、不法行為に当たる。そして、Xは、金銭消費貸借契約に名を借りた悪質な犯罪行為により、Yに対し、合計108万9000円の金を支払わされ、同額の損害を被った。

 本件は、Yから多数回にわたり金員を借り入れ、その返済をしてきたXが、Yは、貸金業の規制等に関する法律に定める貸金業者であるにもかかわらず、Xとの取引において所定の契約書面や領収証等の交付をしなかったばかりか、年利1200パーセントにも及ぶ著しく高率の利息を受領するなどしたとして、Yに対し、不法行為または不当利得に基づいて、XがYに支払った金員の総額108万9000円全額についての損害賠償または不当利得返還等の支払いを求めたものである。

 他方、Yは逆に、Xに対し、4回分の貸金合計28万1000円の返済ならびに各貸付日から支払い済みまでの年29.2パーセントの割合による約定利息および遅延損害金の支払いを求めた。

 原判決では、Yの請求については、これをいずれも棄却した。Xの請求については、一部を認容して、その余りを棄却したので、Xがこれを不服として、返済した金銭全額の返還を求めて控訴したものである。



理由

 Yは、Xとの間で金員の授受をしていたことは認められるが、それは、貸金業法や出資法をまったく無視する態様の行為であり、まさに無法な貸し付けと回収であって、貸金業者として到底許されない違法行為であるというべきである。

 法は、ある程度の高利による消費者金融を許容してはいるが、本件のように出資法の罰則に明らかに該当する行為については、もはや、金銭消費貸借契約という法律構成をすること自体が不適切である。Yが支出した貸金についても、それは貸金に名を借りた違法行為の手段に過ぎず、民法上の保護に値する財産的価値の移転があったと評価すべきではない。

 したがって、本件において、XがYに支払った108万9000円は、その全額がYの不法行為に基づく損害であるといい得るとともに、YからXに交付された金員については、実体法上保護に値しないのみならず、訴訟法上の観点からみても、Yに利益になるように評価することが許されないものというべきである。このことは、例えば、通常の取引における債権者の不注意に基づく過失相殺の主張が許されても、当該取引が債務者の詐欺や強迫による場合には、当の欺罔行為者または強迫行為者である債務者からの過失相殺の主張を許さないものとすることと同様に、法の実現の場面における各行為や主張の評価として、民法および民事訴訟法の前提となっているものと解することができる(民法第1条、第91条、民事訴訟法第2条)。



解説

 平成15年度のヤミ金規制法(注)による貸金業規制法の改正により、年利109.5パーセントを超える利息の貸し付けは無効とする旨が定められた。それ以前から、出資法に大幅に違反する高金利で、貸金業規制法に定める契約書面の交付義務、領収書面の交付義務などを守らない悪質な業者による貸し付けについては、不法原因給付であるとか、公序良俗違反であるとして、貸金業者からの返済請求は認めない判決が多数出されていた。また、こうした貸金業者に対して消費者が弁済した金員について、利息相当部分については返還を命ずるのが判決の流れとなっていた。

 本件訴訟で問題となったのは、貸金業登録業者でありながら同法に定める契約書面の交付義務、領収書面の交付義務を守らず、年利1200パーセントもの超高金利で貸し付けていた事業者からの過酷な取り立てによって弁済した金額について、その全額について返還を求めた点である。借入元金相当額についてもすべて返還を認めた下級審判決は複数あるが、本件判決は、高等裁判所のレベルで元本相当額も含めた全額について返還を命じた初の判決として参考になる。

 「出資法の罰則に明らかに該当する行為については、もはや、金銭消費貸借契約という法律構成をすること自体が相当ではなく、Yが支出した貸金についても、それは貸金に名を借りた違法行為の手段に過ぎず、民法上の保護に値する財産的価値の移転があったと評価することは相当ではない」として、支払ったすべての金額が不法行為による損害であると認定し、さらにYからXに交付された金銭については、実体法上保護に値しないのみならず、訴訟法上の観点から見ても、Yに利益になるように評価することが許されないとする点は、同種の実務においても参考になる。

 なお、本判決については、被控訴人より、平成17年3月8日に上告の申し立てがなされている。

注 ヤミ金規制法:「貸金業の規制等に関する法律及び出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律の一部を改正する法律」



参考判例

利息のみならず元本相当額を含めた全額について消費者に返還義務がないことを明らかにした判決としては、本判決のほか、

  1. (1)東京簡易裁判所平成15年2月13日判決
  2. (2)東京簡易裁判所平成16年11月10日判決
  3. (3)福岡高等裁判所平成17年1月27日判決
    (『判例タイムズ』1177号188ページ)

などがある。なお、(3)は、本判決に先行する高裁判決であるが、同事案においては、契約の全貌が明らかになっていないこともあってか、既弁済の金員の返還は請求されていない。

反対に、元本相当額については返還の義務を負うとした判決として、

  1. (4)東京簡易裁判所平成14年10月24日判決
  2. (5)東京簡易裁判所平成14年11月22日判決
  3. (6)東京簡易裁判所平成14年12月2日判決

などがある。

※なお、参考判例は、裁判所のホームページ「裁判例情報」で検索できます。



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