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[2005年8月:更新]
[2005年7月:公表]

外国語会話教室の中途解約方法を定めた約款と特定商取引法

 本件は、外国語会話教室に入学した生徒が中途解約をするに当たり、前払い金の払戻精算において控除される「提供された特定継続的役務の対価に相当する額」について、入学時の単価と異なる単価をもって算定するとの約款が特定商取引法に違反することについて、詳細な判断が示された事例である。(東京地方裁判所平成17年2月16日判決)


事件の概要

X:消費者(原告)
Y:外国語会話教室(被告)

 消費者Xは、平成13年9月13日、Yにおいて、600ポイントのレッスンポイントを75万6,000円で購入し、さらに10枚のVOICEチケットを2万1,000円で購入して、同校に入学した。Yが発行するコースガイドならびに「登録申込書」に記載された約款によると、入学に当たっては、あらかじめレッスンを受講するためのレッスンポイントを一括して購入しなければならず、受講者はこれによって1ポイント当たり1回のレッスンを受講できる。また、受講者は、上記レッスンとは別にVOICEルームで外国人スタッフと会話練習をすることもできるが、その場合もこれを利用するためのVOICEチケットをあらかじめ一括して購入しなければならないシステムとなっている。

 Xは、入学後、10ポイントのレッスンポイントを3回にわたって3万1,500円で購入した。したがって、Xが購入したレッスンポイントの価格は、前記の金額と合わせて78万7,500円となる。また、Xは、同じくY入学後、50枚のVOICEチケットを8万4,780円で購入した。したがって、Xが購入したVOICEチケットの価格は、前記の金額と合わせて10万5,780円となる。

 Xは、Yに対し、平成16年7月30日、中途解約の意思表示をした。上記解約申し入れのときまでにXが消化したレッスンポイントは386ポイントであり、同じくXが消化したVOICEチケットは25枚であった。Xが入校した当時、レッスンポイントの料金は、600ポイントを一括して購入した場合の1ポイント当たり1200円から、80ポイントを購入した場合の1ポイント当たり2,300円まで9段階で(消費税別※)、購入したポイント数が多くなるに従いポイント単価が安くなる制度となっていた。

 Xが入校した当時、Yが定めた約款には、中途解約時における精算について、精算の際に差し引かれるべき消化済み受講料のポイント単価は、「役務提供済みポイント数以下で最も近いコースの契約時のポイント単価とし、デイタイム登録、スタンダード登録、24時間登録の登録種別に該当する単価」とし、「ただし、消化済み受講料は役務提供済みポイント数以上の最も近いコースのポイント総額を上限とする」旨が定められていた。消化済みVOICE利用料のチケット単価についても、「利用済み回数に2,000円を掛けた金額(消費税別※)とする」と規定されていた。また、同約款には、解約手数料について、前記差引計算後の金額の2割(ただし、5万円を上限とする)とする旨の規定が存在する。

 本件の争点は、Xの中途解約に際して前払い金から精算されるべき消化済み受講料のポイント単価および消化済みVOICEチケット利用料の単価がいくらになるべきかという点である。(※編集班注)



理由

 本件においてYが主張する消化済み受講料のポイント単価についての約款の内容の合理性について検討する。Y主張の約款をみると、その内容は、契約当初の単価よりも高額な単価に基づく役務提供分の対価を算定する点において、中途解約をしようとする者に不利に働くことは否めない。その単価の差は、最大で1・9倍を超えるのであり、利用者側が中途解約をしようとする場合に、上記約款の存在がこれを制約する機能を果たすことも容易に推認できるところである。

 特定商取引法41条2項が「特定継続的役務提供」業種(エステティックサロン、外国語会話教室、学習塾、家庭教師派遣等)に共通する「特定継続的役務」の性格として、(1)役務の提供を受ける者の身体の美化又は知識若しくは技能の向上その他のその者の心身又は身上に関する目的を実現させることをもって誘引が行われるもの(同項1号)とともに、(2)役務の性質上、前号に規定する目的が実現するかどうかが確実でないもの(同項2号)を掲げていることからも裏づけられるように、上記業種は、いずれも利用者側からみて、契約時においては期待するようなサービスが受けられるか否か、サービスを受けた結果として期待するような成果が得られるか否かについて必ずしも明らかでないことに特徴があるのであり、上記業種において、現実に利用を開始したところ、期待したようなサービスが受けられない、あるいは期待していた成果が得られないといった理由で中途解約権を行使しようとする者が相当数いることも推認するに難くない。また、長期にわたる利用を前提として多額の利用料を前払いしたものの、やむを得ない都合により中途で利用を断念せざるを得ない者が一定割合いることも考えられる。だからこそ、同法は、中途解約権を保障し(同法49条1項)、さらに精算に当たっての違約金等の上限規制などを通じてその実質的な保障を図ろうとしているものと解される。

 仮にY主張のように、大量購入に伴う割引制度を悪用する者がいるとしても、中途解約をしようとする者がすべてそのような者とは限らない以上、Y主張のような約款の存在は、Y主張の目的を超えて、同法が想定し、保障しようとしている中途解約権の行使を制約する方向に働く結果となる。したがって、Y主張の約款の内容は、その目的との関係において必要以上に中途解約権を制約するものといわざるを得ない。

 以上によれば、Yの約款は、合理的な理由があるとはいえず、その実質的機能において利用者側が中途解約権を行使するに当たってこれを制約する役割を果たす点において前記の特定商取引法49条2項1号の定める上限規制に反する。



解説

 特定継続的役務提供契約において、提供済み役務の精算条項の合理性が問題となるケースが多発している。

 本件において、業者は、本件の精算条項の合理性として、「当初から少量のポイントを購入して受講した者と大量購入をして中途解約をした者との公平を図る必要がある」と主張したが、判決は、「当初、多額の前払い金を納入した者がそのことによって優遇された単価で受講できることが不公平とはいえないのと同様に、その者が中途解約をするに際しても既に多額の前払い金を支払っていたという理由によって優遇された単価で提供済み役務の対価を受けたとしてもあながち不公平とは言い得ない」と認定した。

 さらに、業者の「同様の制度は、JR定期券の中途解約、NHKテレビ受信料の中途解約においても見られるところであり、この点からもYの定める約款の合理性が裏づけられる」とする反論も、「特定商取引法の規制対象となる業種によって提供される役務とJR定期券もしくはNHKテレビ受信料によって提供される役務とでは、役務の内容に関する予測可能性を含めその性質を異にする」として否定した。

 同様の理由は、VOICEチケットについても当てはまり、「Yが中途解約の際の精算に当たって、すでに提供されたVOICEチケットによる役務の対価を算定する際に、購入時の単価にかかわらず、単価2,000円にVOICEチケット利用済み回数を掛けて算定した金額とする約款は、合理性がなく、その実質的機能において利用者側が中途解約権を行使するに当たってこれを制約する役割を果たす点において前記の特定商取引法49条2項1号の定める上限規制に反する」として契約締結時の単価で精算すべきと判断した。

 結論として、本判決は、支払いを受けたレッスンポイントの購入代金78万7,500円から控除可能な提供済み役務の対価48万6,360円を差し引いた金額(30万1,140円)とVOICEチケットの購入代金10万5,780円から同じく控除可能な提供済み役務の対価4万6,434円を差し引いた金額(5万9,346円)の合計である36万486円から、解約手数料5万円を差し引いた31万486円をもって、YがXに精算すべき金額と判断した。
 同種の事例の参考になる判決である。

(注)なお控訴審(東京高裁平成17年7月20日判決)においても、原判決維持(消費者勝訴)の判決が出された(上告)。



参考判例

東京地方裁判所 平成16年7月13日判決 (判例タイムズ1173号227ページ)、その判決の解説は、2004年11月掲載文



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