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[2004年11月:公表]

英会話教室の中途解約に伴う提供済み役務の清算方法

 本件は、特定継続的役務提供契約の英会話教室において、消費者が中途解約した場合の提供済み役務の清算方法について、事業者の約款では、実際に利用されていないレッスンポイントを有効期間が経過したとして、提供済みのものとして清算する方法となっている点について、許されないものと判断し、消費者が主張する清算方法を認めた事例である。(東京地方裁判所平成16年7月13日判決)

  • 判例集未登載
  • 請求棄却(確定)

事件の概要

X:消費者(原告)
Y:英会話教室(被告)

 消費者Xは、平成11年8月にYから、「多量のレッスンポイントを購入したほうが単価が安い」「中途解約することになっても、使用期間が3カ月以上残っていれば、未使用のレッスンポイントは残量の一番近いレッスンのパック単価に乗じて計算して、残金から手数料を差し引いて返還してもらえる」と勧誘され、デメリットは手数料くらいで済む旨の説明をされたので、使用期間1年間でレッスンポイント100回分の契約をした。翌月、さらに「今月中なら5%引きですから、ぜひとも追加購入してください」と勧められ、追加購入し、さらに、まだレッスンポイントが残っていたにもかかわらず、平成13年12月にも、600ポイント (回) の契約をした。このときには、契約内容が変更になったなどの説明はされなかった。

 その後、平成15年7月30日に、Xは自己都合により中途解約の申し入れをして清算を求めた。これに対して、Yからの清算書には、「各登録ポイント数には有効期限が定められている。有効期限は登録ポイントのうち、最初の3分の1が契約日から1年、次の3分の1が契約日から2年、最後の3分の1が契約日から3年です」と記載され、返金額は25万5834円と記載されていた。

 Xが契約時の説明と違うのでさらに説明を求めたところ、本件レッスンポイント購入時の清算方法によると、返金額は19万2993円になるが、その後改定された現行の清算条件によると25万5834円になるので、Xに有利な現行の清算方法による金額を返金する旨回答された。

 Xは、Yの清算方法は実際に使用されていないレッスンポイントを提供したものとして計算したもので、特定商取引法49条に違反しており無効である、契約の内容「600レッスンポイント、価格71万8200円」 に基づいて実際に利用した138回分の対価を計算し、これに解約手数料5万円を加えれば、Yが請求できる金額は合計21万5186円であり、金50万3014円が返還されるべきであるとし、これに慰謝料と弁護士費用を加えた合計約96万円の支払いを求めて提訴した。



理由

 役務受領者にとって、中途解約に関する清算条件は重大な関心事に属するということができる。

 Yは、レッスンチケットの追加購入を勧める際、割引期間中であるとか、レッスンチケットを多量に購入するほうが単価が安くなるなどと強調してレッスンポイントの追加購入を勧めるものの、消費有効期限があることなどの中途解約に伴う清算条件について口頭で説明することは少なく、また追加購入の際、有効期限の経過により消化済みと見なすなどの清算条件の変更があっても、質問がない限り、その旨を口頭で説明することは少ないことが認められる。このような実態は特定商取引法の趣旨に沿わないという他なく、同法49条2項の中途解約の場合の損害賠償等の上限に関する規定の趣旨や、YがXに提供した役務の内容、レッスンポイントの勧誘にかかる事情等からすると、本件における解約清算金額の算定に当たっては、実際に提供されていないレッスンポイントを有効期間の経過等を理由に消化済みのものと見なして清算することは許されないというべきである。

 このような観点から、本件における中途解約に伴う清算方法について検討すると、本件における解約返済金額は次のとおりとなる。  特定商取引法49条2項によれば、特定継続的役務提供等契約が解除され、それが特定継続的役務提供の提供開始後である場合、役務提供事業者は、提供された特定継続的役務提供の対価に相当する額と当該特定継続的役務提供契約の解除によって通常生ずる損害の額として同法41条2項の政令で定める役務ごとに政令で定める額を合算した額に、これに対する法定利率による遅延損害金の額を合算した額を超える額の金銭の支払いを、特定継続的役務の提供を受ける者に対して請求することができないとされている。

 本件において、上記の「提供された特定継続的役務提供の対価に相当する額」 は、71万8200円 (Xが支払ったレッスンポイント代金) ×138 (Xの消化したポイント) ÷600 (本件レッスンポイント)=16万5186円となり、「語学の教授」 に関する 「契約の解除によって通常生ずる損害の額として41条2項の政令で定める役務ごとに政令で定める額」 は、5万円または契約残額の100分の20に相当する額のいずれか低い額であるから5万円となる。そうすると、本件契約が解除されたことに伴って、YがXに支払うべき金額は71万8200円から16万5186円と5万円の合算額21万5186円を控除した50万3014円となる。したがって、特定商取引法49条に基づく主張には理由がある。



解説

 判決の主文は、消費者からの請求棄却であるが、提訴後に、消費者が返還を求めていた金額を事業者が供託したため、消費者からの訴えの利益がないとして棄却されたものである。供託した場合には弁済したものとされる。

 本件事業者は、消費者が提訴すると合理的計算方法に基づいた金額で清算して消費者に支払うという対応をしている。本件でも、消費者が訴訟を提起したために同様の対応をしたが、消費者が判決を求めて受領を拒否したために、請求された金員を事業者が供託した。しかし、判決の理由では、消費者の主張する清算方法が合理的であり、業者の定めた清算方法は認められないとしており、実質的には消費者の主張が認められている。

 特定商取引法では、特定継続的役務提供契約について、クーリング・オフ期間経過後も消費者からの中途解約は自由であるとし、事業者が請求できる金員は、提供済みのサービスの対価と同法で定めた限度内の解約手数料、およびこの合計額に対する法定利率による遅延損害金を上限とすると定めている。提供済みサービスの対価の計算方法については、特定商取引法では、具体的な定めを設けていないため、事業者によっては合理性を欠く定めをするものもある。これに当てはめて計算すると提供済みのサービスは少ないにもかかわらず、支払済みの契約金額の大部分が消費者には返還されない結果となる。

 本件では、600ポイント (回) 分のレッスンを提供する内容で契約しているが、清算方法では、1年経過ごとに当然に一定ポイントを消化したものとして清算すると定めている。契約締結後、相当期間が経過していても消化回数が少ないケースでは、消化回数による算出方法より多額の負担を強いられる。また、600ポイント契約すれば1回当たりの単価が安くなり得であると説得して大量の契約をさせるものの、中途解約の場合には、利用回数に最も近い契約内容の単価によって清算する (契約上の単価よりレッスン単価は高くなる) という定めも設けていた。

 本件事業者は消費者に返還すべき金額は約25万円であると主張した。これに対して、消費者は、契約時の単価計算で実際に利用したレッスン回数で計算すべきであり、返還されるべき金額は約50万円であると主張した。判決は、消費者が主張する「契約による単価で、実際の利用回数分を算出したもの」と「解約手数料5万円」 の合計額が消費者の負担すべき金額であることを明確にしたもので、清算方法については消費者の主張が認められた。



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