[本文へ] 消費生活・消費者問題に関する事例や対処方法を紹介しています。

現在の位置 : トップページ > 相談事例・判例 > 消費者問題の判例集 > 美顔器のモニター商法と連鎖販売取引

[2003年7月:公表]

美顔器のモニター商法と連鎖販売取引

 本件は、美顔器を購入し、事業者らとの間でその商品の宣伝・広告等の業務委託契約を締結した消費者らが、その後はたん破綻した事業者に対し破綻することが明らかな詐欺商法だったとして不法行為による損害賠償を請求し認められた事例である。(東京地方裁判所平成14年7月24日判決)

  • 判決文入手
  • 控訴

事件の概要

Xら:原告(消費者88名)
Y1:被告(Xらに美顔器等を販売した業者)
Y2:被告(Xらと業務委託契約を締結した業者)
Y3:被告(Y1の代表取締役)
Y4:被告(Y2の代表取締役)

 Y1は、Xら顧客に対して、超音波美顔器や化粧品を販売する業務を営んでいた。美顔器と付属化粧品との合計価格は1セット36万7500円である。Xらは、いずれもY1との間で平成11年2月ころから同12年2月ころにかけて本件美顔器の売買契約を締結し、クレジット会社との間で分割払いのクレジット契約を締結した。

 Y2は、Xらを含むY1の顧客との間で業務委託契約を締結し、顧客がマンスリーレポート(本件美顔器を使用した意見・感想)の提出、チラシの配布、勉強会への参加等の業務を行なったことによる対価として、顧客に対して所定の報酬(総額42万円)を20回前後の分割払いで支給する形態の業務を営んでいる。この形態の業務委託契約を締結した顧客は「メンバー」と呼称される。他にも、本件業務委託契約には美顔器の購入者を一人勧誘するたびごとに3万5000円の紹介手数料が支払われる等、美顔器の購入者の増減に伴って報酬が増減する形態の契約も存在し、この形態の業務委託契約を締結した顧客は「ビジネス」と呼称される。メンバーズプランを選択した顧客は、総額42万円が支給された時点で自動的にビジネスプランに変更される。本件訴訟におけるXらは、ほぼ全員がメンバーまたはメンバーと同視しうる顧客である。

 業務提供契約書用紙上の「報酬」欄には、「Y1が販売する商品代金の支払義務を保障するのではありません」との文字がゴシック体で印刷されている。一方、本件業務委託契約に基づき、Xらの口座には報酬が振り込まれているところ、同口座の通帳の記載では、振り込み名義人は「カ)Y1」となっている。

 本件は、Y1・Y2が破綻し、報酬が支払われなくなったために、メンバーとなっていた消費者88名が、Yらの商法は不法行為によるものであると主張して1人当たり2万円の損害賠償の支払いを求めて提訴したものである。

 争点となったのは以下の点である。(1)本件の実態はモニター商法であるか。(2)モニター販売契約を勧誘し締結させる行為は不法行為に当たるか。(3)錯誤あるいはクーリング・オフによる契約解除が可能か。(4)YらがXらに対して支払うべき損害額はいくらか。(5)本件契約と損害との間に因果関係はあるか。



理由

 Y1とY2の本店所在地が同じであったこと、Xらの大半はY1とY2が同一法人であると認識していたこと、業務委託契約に基づき振り込まれた報酬の振込名義人が「カ)Y1」となっていることなどからすると、Y1とY2は形式上は別法人であっても一体不可分となって本件モニター販売活動を行っていたものであり、実質的には一体の法人であると認められる。またY2との間の業務委託契約はY1との売買契約を前提としているなど、Y1の本件売買契約とY2の本件業務委託契約は密接なかかわりを有し、実質的には不可分一体と認められる。

 本件モニター販売契約のビジネスプランは「特定利益を収受し得ることをもって誘引し、その者と特定負担を伴うその商品の販売」(マルチ商法)に当たる。また、メンバーズプランは特定商取引法51条の業務提供誘引販売取引に当たる。そして、メンバーズプランは、自動的にビジネスプランに移行することが予定されているから、本件モニター販売契約は、一体として連鎖販売取引(マルチ商法)の性質を有しているものと認められる。

 モニター販売契約の勧誘行為は、被勧誘者に対し、本件モニター販売契約の問題点や新規勧誘の困難性を一切秘匿して、あたかも手軽に高収入の望めるサイドビジネスであるかのような印象を与えるものであるから、Y1・Y2の勧誘方法は、特定商取引法34条の禁止する「連鎖販売取引の相手方の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものにつき、故意に事実を告げない行為」に該当し、実質的に同条項に抵触しているものと認められる。

 かかるY1・Y2の欺もう的な勧誘行為によりXらは錯誤に陥り本件モニター契約を締結しているのであるから、Y1・Y2は、Xらに対して不法行為責任を負うというべきである。なお、Y1・Y2は実質的に同一の法人であることは前記認定のとおりであるから、Y2は、その成立以前のY1の不法行為についても、Y1と連帯して責任を負う。また、Y3・Y4は、Y1・Y2の代表取締役として本件モニター販売契約の指導的立場にあった者であるから、Y1・Y2と連帯して共同不法行為責任を負う。

 本件モニター販売契約は、Yらの欺もう行為によって締結されたものであるところ、かかる欺もう行為によってXらが本件美顔器等の商品代金を支払ったこと自体がXらの損害と認められる。そして、本件美顔器の代金は36万7500円であり、Xらの中にはこれに加えてクレジット会社に対して立替払手数料を負担している者がいることが認められるから、Xらの損害は、いずれも少なくともXらの本件請求である2万円を下らないことは明らかである。

 なお、Xらは、本件モニター販売契約によってすでに受け取ったいくらかの報酬額を控除して請求しているが、かかる報酬は、Xらが現実に本件モニター販売契約の業務を遂行することによりYらから受領したものであり、本来はこれを損害から控除する必要のないものである。また、Xらの多くは、本件美顔器等をいまだ所持していることが認められるが、同人らの多くは、本件紛争が解決した後にこれを返還する意思を有しており、本件美顔器等の代金相当額を控除するのも相当でない。



解説

 本件は、Y1が美顔器等の販売及び取次事務などを、Y2が美顔器の販売の人材派遣の企画等を業務とする会社であり、本店所在地は同じであった。Y1らは、顧客に対して美顔器を購入しY2から業務を提供することで収入が得られると説明して、Y1と美顔器等の売買契約を、Y2と業務委託契約を締結させていた。業務の内容は、一種のモニターレポートを提出すれば報酬が支払われ、顧客を紹介すると報酬が得られるというものであった。

 Xらは、Yらから支払われる報酬で美顔器等のクレジットの支払いをしていたが、Yらが経済的に破綻し報酬が得られなくなったことから、クレジット会社への支払いを停止したところ、クレジット会社からの請求を受けた。Yらの破綻により多数の消費者が被害を被ったため、被害者の会が結成され、クレジット会社に対する抗弁の対抗を主張していた。その抗弁内容は、(1)本件は、美顔器等の売買と業務委託契約とが一体となったモニター商法であるから報酬が支払われなくなったことは、クレジット会社に対する抗弁の対抗事由になる、(2)本件モニター契約は連鎖販売取引に該当するが、法定書面の交付がなく、契約締結後20日を経過後のクーリング・オフは有効、(3)本件のモニター契約は、破綻必至の詐欺的商法である、などであった。

 これに対して、クレジット会社は、Y1・Y2は別会社である、商品売買契約と業務委託契約は別個の契約である、などと主張してクレジット代金の請求を続けていた。そこで弁護団が、Y1・Y2らを相手取って、1人当たり2万円の損害賠償請求訴訟を提起したのが本件訴訟である。

 本件訴訟は、Yらの商法の実態を明らかにし、不法行為に該当することを明確にするために提訴されたものであり、会社は既に破綻して支払能力はないため、消費者の損害の一部である1人2万円の請求をしたものであった。

 本件判決では、Y1・Y2の経営実態まで踏み込んで実態として同一の会社であったとし、本件契約は商品売買と業務委託とが一体の契約であると認定した。さらに、破綻性があるのにこれを秘して利益が得られるような勧誘をしたとして、不法行為に該当するものと認めた。

 また、購入商品について、消費者らが返還するつもりでいることから、不当利得とは認めなかった点も参考になる。本件モニター販売契約によって得た報酬についても、Xらが現実に本件モニター販売契約の業務を遂行することによりYらから受領したものであり、本来はこれを損害から控除する必要のないものであると判断している点も連鎖販売取引など類似の事例の参考となる。



参考判例

  1. (1)東京高裁平成5年3月29日判決 判例タイムズ861号260ページ(ベルギーダイヤモンドにつき詐欺的商法で違法とした判決)
  2. (2)広島高裁平成5年7月16日判決 判例タイムズ858号198ページ(ベルギーダイヤモンドにつき不法行為責任を認めた判決)
  3. (3)大阪地裁昭和55年2月29日判決 判例時報959号19ページ(いわゆる白光マルチ事件)


消費者問題の判例集トップページへ

ページトップへ