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[2001年11月:公表]

ダイヤルQ2無断利用と通話料

 本件は、他人のダイヤルQ2無断利用の通話料請求が争われた「ダイヤルQ2広島訴訟」最高裁判決である。(最高裁判所平成13年3月27日判決)

  • 判例集未登載
  • 一部上告棄却・一部破棄自判

事件の概要

X:原告・控訴人・上告人(日本電信電話株式会社)
Y:被告・被控訴人・被上告人(消費者)
A:Yの息子、当時中学3年生

 Xは、平成元年7月から、情報料回収代行サービス(ダイヤルQ2)を開始した。これは、情報提供者がXとの間で「ダイヤルQ2(情報料回収代行サービス)に関する契約」を締結すると、0990から始まる電話番号が割り当てられる。情報を求める者が、この番号に電話をかけて有料情報サービスを利用すると、利用時間に応じて定められた情報料(3分あたり10円から300円まで)が課金され、通話料に含めてXから請求される。Xは回収した情報料から所定の手数料(1番組あたり1月1万7000円+回収代行した料金の9%)を差し引いた額を情報提供者に支払う、というシステムである。

 Xは、従来からの加入電話契約者に対してQ2情報サービスの利用意思を具体的に確認したり、同サービスの内容等につき個別的に告知したりすることなく、同サービスを既設の電話回線から一般的に利用可能なものとしてダイヤルQ2事業を開始した。

 Aは,平成3年1月2日から同年2月初めにかけて、Yの自宅に設置されている本件加入電話から、見知らぬ女性と会話する番組を提供する情報提供者に電話をかけて、Yの承諾なしにQ2情報サービスを利用した。当時、Q2サービスについては情報料と通話料とに区分することができず、両者を合わせたQ2サービス利用料は、2月分で42万余円、3月分で10万余円であった。Yの本件加入電話の従前の電話料金は、おおむね毎月1万円以内に収まっていた。

 XがYにとって一番有利になるように計算した本件通話料は、平成3年2月分8万1525円および同年3月分1万9555円であった。XがYに、本件通話料を含む本件加入電話にかかわる平成3年2月分ないし同年5月分の各通話料金合計14万2891円の支払いを請求した(情報料については請求放棄)のに対し、第一審(広島地尾道支判平成6年1月21日判タ843号248頁)は、Q2サービスにかかわる通話料を除く部分についてのみ請求を認めた。控訴審(広島高判平成7年5月24日判タ892号241頁)もまた、電話サービス契約約款118条(注参照)に基づいてその支払を請求することは,信義則に反し許されないとして、Xからの控訴を棄却した。

理由

本件約款118条1項の定めは、大規模な組織機構を前提として一般大衆に電気通信役務を提供する公共的事業においては、その業務の運営上やむを得ない措置である。しかし、加入電話契約は、いわゆる普通契約約款によって契約内容が規律されるものとはいえ、契約一般の法理に服することに変わりはなく、その契約上の権利及び義務の内容については、信義誠実の原則に照らして考察すべきである。そして、当該契約のよって立つ事実関係が変化し、そのために契約当事者の当初の予想と著しく異なる結果を招来することになるときは、その程度に応じて、契約当事者の権利および義務の内容、範囲にいかなる影響を及ぼすかについて、慎重に検討する必要があるといわなければならない。

 Q2情報サービスは,日常生活上の意思伝達手段という従来の通話とは異なり、その利用にかかる通話料の高額化に容易に結び付く危険を内包していたものであったから、公益的事業者であるXとしては、一般家庭に広く普及していた加入電話から一般的に利用可能な形でダイヤルQ2事業を開始するに当たっては、同サービスの内容やその危険性等につき具体的かつ十分な周知を図るとともに、その危険の現実化をできる限り防止するために可能な対策を講じておくべき責務があったというべきである。本件についてこれを見ると、上記危険性等の周知及びこれに対する対策の実施がいまだ十分とはいえない状況にあった平成3年当時、加入電話契約者であるYが同サービスの内容及びその危険性等につき具体的な認識を有しない状態の下で、Yの未成年の子Aによる同サービスの多数回・長時間に及ぶ無断利用がされたために本件通話料が高額化したというのであって、この事態は、Xが上記責務を十分に果たさなかったことによって生じたものということができる。

 こうした点にかんがみれば、Yが料金高額化の事実及びその原因を認識してこれに対する措置を講ずることが可能となるまでの間に発生した通話料についてまで、本件約款118条1項の規定が存在することの一事をもってYにその全部を負担させるべきものとすることは、信義則ないし衡平の観念に照らして直ちに是認し難いというべきである。そして、その限度は、加入電話の使用とその管理については加入電話契約者においてこれを決し得る立場にあることなどの事情に加え、前記の事実関係を考慮するとき、本件通話料の金額の5割をもって相当とし、Xがそれを超える部分につきYに対してその支払を請求することは許されないと解するのが相当である。

解説

加入電話契約者の承諾なしに第三者がダイヤルQ2を利用した場合の通話料に、電話サービス契約約款118条を適用すべきかどうかについて、下級審裁判例は分かれていた。否定説は、(1)ダイヤルQ2にはNTTと情報提供者双方の収益をめざした共同事業性があり、したがって情報料支払義務がないのに通話料支払義務のみが生じるとするのはおかしいこと、(2)他人の無断利用による危険が大きく、通話料が著しく高額になりやすいこと、(3)サービスや約款の内容についての周知が十分でなく、加入電話契約者が他人によるダイヤルQ2の無断利用を防止するための適切な措置をとることを期待できなかったことなどを理由としている。これに対して、肯定説は、一般通話とダイヤルQ2の利用に伴う通話とで加入電話の利用という点では質的差異はないことを理由としている。

 本判決は、原則的には肯定説に立ちつつ、ダイヤルQ2サービスは、従来の通話サービスとは異なって、その利用にかかわる通話料の高額化に容易に結び付く危険があるから、NTTとしては、サービス開始にあたり、その危険性等について具体的かつ十分な周知を図るとともに、その危険の現実化をできる限り防止するために可能な対策を講じておくべき責務があったとし、加入電話契約者が料金高額化の事実及びその原因を認識してこれに対する措置を講ずることが可能となるまでの間に発生した通話料については、信義則上、通話料の5割についてのみ支払義務を負うとの折衷的判断を示した。

 電話を利用した有料情報サービスには、情報提供者が事前の会員登録制をとり、クレジットカードなり、銀行振込なりで料金を支払ってもらうという仕組みも可能であり、もし、このようなNTTの情報料回収代行サービスに依存しない有料情報サービスを、第三者が無断で利用した場合であれば、加入電話契約者として約款118条の適用を受けることは十分に考えられる。しかし、ダイヤルQ2は、そもそも、NTTによる情報料の回収代行サービス抜きでは成り立ち得ないものであり、NTT自体の事業性がかなり高いものである。そうであれば、加入電話契約者が料金高額化の事実及びその原因を認識してこれに対する措置を講ずることが可能となるまでの間に発生した通話料について、電話サービス契約約款118条に基づいて、たとえ一部であっても加入電話契約者に負担させることは、信義則に反すると考えるべきであろう。

 (注)電話サービス契約約款118条(当時・抜粋)

契約者は、次の通話について、第113条(通話時間の測定等)の規定により測定した通話時間と料金表等1表第2(通話料金)の規定とに基づいて算出した料金の支払いを要します。

区別 支払いを要する者
 1 2から5以外の通話
 (1)契約者回線から行った通話
 (その契約者回線の契約者以外の者が行った通話を含みます。)
 (以下略) 
その契約者回線の契約者