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[1999年10月:公表]

新築住宅の瑕疵により損害賠償請求が認められた事例

 本件は、新築住宅の瑕疵により慰謝料を含む請求金額のほぼ全額が認められた事例である。(大阪地方裁判所平成十年七月二十九日判決)

  • 消費者法ニュース37号30頁

事件の概要

X:原告(消費者)
Y1:被告(販売業者)
Y2:被告(建築業者)
Y3:被告(建築士)

 Xは、平成元年2月にY1から本件土地建物を代金4250万円で買い受けた。本件建物は、Y1がY2から本件土地を購入し、Y1の注文によりY2が二級建築士であるY3を設計者及び工事監理者として土木事務所に届け出て建築したものであった。

 Y3は、Y2から、建売金融公庫付確認申請手続並びに本件建物の中間・完了検査の申請及び立会いを、代金9万7千円で請け負ったので、右契約に基づき、Y2から提出された本件建物の平面図を基に、立面図、矩計図、筋かいの軸組計算図及び仕様書を作成し、これらを本件土地の開発行為に関する検査済証を添付したうえ土木事務所に提出して建築確認申請等の手続を行うとともに、本件建物の中間・完了検査を申請しこれらの検査に立ち会ったが、本件建物の設計及び工事監理は行わなかった。

 ところが、建築基準法五条の二及び建築士法三条の三第一項は、延べ面積が100平方メートルを超える木造建物を建築する場合、必ず一級又は二級建築士でなければ設計及び工事監理をしてはならず、これらに違反した工事をしてはならない旨規定しているものである。Y3の行為は同法に違反するものであった。

 そして、本件建物にはコンクリート擁壁の瑕疵、基礎構造について底盤不均質で公庫基準をみたしていない瑕疵、軸組構造に多くの欠陥があり、建築基準法施行令及び公庫仕様書による基準を満たしていない瑕疵、建物の外周部の状態も庭全体が6センチほど南側に移動しており、外壁に多数のひび割れが生じていること、建物内部も建物全体で7センチの高低差があり、建物内部の状態は壁面玄関土間に多数の亀裂があり、7カ所の扉の開閉が困難などの多数の瑕疵がある状態であり、本件土地・建物の瑕疵は、部分的な補修工事は困難な状況であった。

 そこで、Xは、販売業者であるY1、建築業者であるY2、二級建築士であるY3全員に対して、Y1には債務不履行ないし不法行為に基づき、Y2、Y3に対しては不法行為に基づいてそれぞれ損害賠償をするよう求めた。

 損害賠償の範囲については、本件コンクリート擁壁及び建物の欠陥は著しいもので、これを修復するためには新しい擁壁と建物を作り替えるほかないとして、そのための取壊し費用等を含む再建築費用5396万円余り、慰謝料100万円、弁護士費用693万円の合計6189万円余りの支払いを求めた。

理由

(1) Y2の過失について

 本件コンクリート擁壁が回転移動したのは、その上に本件ブロック擁壁が設置された上、さらに盛土がされたため、本件コンクリート擁壁の耐力以上の負荷がかかったことによるものであることが認められる。そして、本件コンクリート擁壁の上に本件ブロック擁壁を設置し盛土することは、宅地造成規制法施行令五ないし七条に違反する行為である。以上によれば、Y2は、過失によって本件コンクリート擁壁の回転移動を生じさせたものというべきである。また、本件建物の基礎及び軸組構造の欠陥についても、過失によって瑕疵を生じさせたものと認められる。

(2) Y3の過失について

 建築基準法五条の二及び建築士法三条の三第一項は、延べ面積が100平方メートルを超える木造建物を建築する場合、必ず一級又は二級建築士でなければ設計及び工事監理をしてはならず、これらに違反した工事をしてはならない旨規定している。これは、延べ面積が100平方メートルを超える新築木造建物の安全性を確保するために設けられた強行規定であるから、一級又は二級建築士は、建物の設計及び工事監理をする意思もないのに設計者・工事監理者として届け出ることは許されないのであって、右建物の設計者・工事監理者として届け出た以上は、その業務を誠実に遂行すべき義務を負っているというべきである(建築士法一八条一項参照)。

 そこで本件についてみるに、本件建物の延べ面積は105.98平方メートルであるから、一級又は二級建築士でなければ、その設計及び工事監理をしてはならず、二級建築士であるY3は、本件建物の設計者及び工事監理者として届け出た以上、その業務を誠実に行うべき義務を負っていたというべきである。しかるに、Y3は、本件建物の設計及び工事監理を怠り、この結果、本件ブロック擁壁や本件建物には、多数の瑕疵が生じた。したがって、Y3は、過失によって右瑕疵を生じさせたというべきである。

(3) Y1の過失について

 不動産業者は、顧客に対して土地・建物を販売する場合、売買契約に付随する義務として、その安全性について調査すべき義務を負っているというべきである。しかし、都市計画法や建築基準法に基づいて公的機関が検査すべきものとされている場合は、土地・建物について専門家による安全調査が実施されるのであるから、不動産業者としては、特段の事情がない限り、公的機関による検査の実施の有無について調査すれば足り、これに加えて、その安全性について独自に調査することまでは必要ではないというべきである。

解説

欠陥住宅に関する消費者被害が多発しているが、本件は、新築の木造一戸建住宅を購入したところ、欠陥があったというケースについて、建築業者と二級建築士に対して売買代金を超える高額な損害賠償を命じた判決であり、同種の事案の解決にあたっての参考になると思われる。ただし、売買契約の当事者である不動産業者の責任は全面的に否定された。

 本件の特徴の第1点としては、二級建築士が設計者・工事監理者として建築確認申請手続きをしていながら、実際には設計・工事監理をしていなかった場合について、建築士の過失を認めた点が挙げられる。二級建築士は、「建築業者から(1)建売金融公庫付確認申請一式並びに(2)中間・完了検査の申請及び立会いを請け負ったにすぎず、本件建物を誠実に設計し工事監理するという義務までは負っていない」と主張して争った。

 しかし、本判決では、建築基準法五条の二及び建築士法三条の三第一項は、[理由 (2)Y3の過失について]のところで判決に示された通り「その業務を誠実に遂行すべき義務を負っているというべきである」として、当該建築士が本件建物建築に関連して契約上から得た利益をはるかに超える損害賠償責任を命じた。

 建築業者の過失判断については、建築基準法の基準を守らなかった点から、過失があるものと認定した点は参考となる。

 新築建物については、建築士による工事監理がきちんとなされていないために瑕疵が発生するケースが少なくないと指摘されている。このような実情にある中で、本件判決は、建築士の専門家としての責任を明確にしたものとして参考になろう。

 なお、Y2、Y3に対して、支払いを命じた認容額は、慰謝料を含むほぼ全額(6002万4912円)という本件土地建物の売買代金を大幅に上回る額であった。これは、本件建物の瑕疵がそれだけ重大なものであったためであると考えられる。

参考判例

  1. (1)神戸地姫路支判 平成七年一月三十日 判例時報一五三一号九二頁
    (建築士が工事監理者としての注意義務を怠った結果、建物の瑕疵を招いたとして、施工業者に使用者責任を認めた事例)
  2. (2)福岡高判 昭和六十一年十月一日 判例タイムズ六三八号一八三頁
    (建築士の設計監理契約上の債務不履行責任を否定した事例)
  3. (3)神戸地判 昭和六十一年九月三日 判例時報一二三八号一一八頁
    (建売住宅に欠陥があったとして、宅建業者に対して全面的な建替費用と慰謝料の支払いを命じた事例)
  4. (4)大阪地判 昭和五十三年十一月二日 判例タイムズ三八七号八六頁
    (手抜き工事について、監理義務違反を理由に、建築士に損害賠償を命じた事例)