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[1999年6月:公表]

パック旅行で旅行会社の債務不履行が認められた事例

 本件は、旅行会社がオーストラリアパック旅行において、約定では船(豪華クルーザー)を利用すると定められていたところ、実際には小型水上飛行機(シープレイン)を利用したことにつき、旅行会社の手配にミスがあったとして債務不履行に当たるとされ、各自それぞれに慰謝料など15万円が認められた事例である。(東京地裁平成九年四月八日判決)

  • 判例タイムズ967号173頁

事件の概要

X1:原告(消費者)
X2:原告(消費者)
Y:被告(旅行会社)

 Xらは、平成8年5月に婚姻届出をし、平成8年6月頃Yとの間で、同年7月6日東京国際空港出発の海外主催旅行「ハネムーンプラン グレートバリアリーフの休日&エアーズロック、シドニー9日ヘイマン島コース」にかかる主催旅行契約を締結し、Xらはそれぞれ代金45万560円を支払った。

 旅行第2日目のハミルトン島からヘイマン島への運送機関も、第5日目のヘイマン島からハミルトン島への運送機関も豪華クルーザーを利用する日程を管理することが約されていた。しかし、2日目に提供された運送機関は、6人乗りの小型水上飛行機(シープレイン)であり、5日目にも前夜になってからXらに伝えられた運送機関はシープレインであり、実際にもシープレインによる運送サービスが提供された。

 Xらは、第5日目の午後から夕刻にかけて、エアーズロックからYのシドニー支店に何度も電話をかけて支店長、次長らに対して本件変更について強く抗議し、担当者がエアーズロックへ来て事情を説明するよう要求した。

 その後は、XらはYが手配した主催旅行による運送機関と宿泊施設の提供したサービスを受けてエアーズロックに滞在し、その後の旅程通り7月14日帰国した。その間の平成8年7月12日、シドニーにおいて支店長と次長は、本件変更についてYに責任があることを認め、Xらの損害についてXらの請求に即して補償する旨を記載した書面を差し入れた。

 Xらは、本件旅行はクルーザーの利用による2日目と5日目の日程は、参加者に印象的で思い出の多い新婚旅行を楽しむべき場所と雰囲気を提供するよう企画された日程であって、本件主催旅行の目玉であり、Xらのためにクルーザーを運航するよう手配を行い、これらの運送機関の利用による日程を現実に管理することは、Yの本件旅行契約の約定内容の重要部分を構成する。従って、クルーザーの運航に代えてシープレインの飛行にした変更は、主催旅行を無意味、台無しにするものであり、かつ当日になって突然に何らの説明もなくXらの承諾もないままに変更されたものであり、債務不履行に当たるから債務不履行解除をした(7月10日の支店長への電話による)と主張し、旅行代金全額と慰謝料150万円の合計195万560円をそれぞれ請求したのが事件の概要である。



理由

本件変更は、全体で9日の旅行日程の内、2日目の日程の一部及び5日目の日程の一部の各運送機関の変更であり、その運送機関が運航する時間も、それぞれ約1時間の予定がそれぞれ20分足らずの運航時間に変更されたものである。

 本件主催旅行の旅行計画の内容としては、主催するYの宣伝パンフレットでも、参加者がハミルトン島からヘイマン島への海を豪華クルーザーで堪能すること、クルーザーで貴族に愛されたヘイマン島へ向かう楽しみが大きいこと、本件クルーザー自体が豪華クルーザーであって充実しておりクルージングが楽しめることを強調しており、クルーザー利用による2日目の日程及び船の利用による5日目の日程は、オーストラリア以外の地域の外国の新婚旅行の計画や、オーストラリアの他の観光地の新婚旅行の計画と比較しても、本件主催旅行の特徴の内の主なポイントの1つとされていること、そして現にXらはこの特徴点に着目して本件旅行契約を結んだものであり、これらの事実によれば本件変更はYが指示したり、事前に承諾したりしたものではないとしても、旅行契約でYがその手配と旅程の管理とを約定した輸送機関の種類の変更で重要なもの(旅行業約款十五条二項一号)に該当する。

 本件変更が生じた理由は、本件クルーザーを所有し運航するAホテルが、本件主催旅行に参加した旅行者がXらのみであり、2日目の日程としては乗船客が少なすぎることのほかに運航開始時刻が早すぎることが理由で、同ホテルが一方的にシープレインに変更したことが認められる。しかしながら、Yは本件主催旅行については、その最少催行人員を2名とすることを約したこと、かつ5日目の旅程として船で早朝五時にヘイマン島を出発してハミルトン島に向かう日程を手配し管理することを約したことが認められるから、Aホテルが一方的に本件変更をしたことは、Yの本件旅行契約に基づく手配が、Yが約した内容の通りには直接又は間接にAホテルには行き届いていなかったことの結果と推認される。すなわち、本件変更は、Yの本件旅行契約に基づく債務の不履行によるものと言わざるを得ない。



解説

海外パック旅行では、交通機関、宿泊施設などが当初の計画から変更されるケースがまま発生しており、消費者の期待に反する結果となるため、旅行業者の責任をめぐって問題が発生している。

 主催旅行約款では、旅行業者は、旅程に従った旅行サービスを提供する義務を負うとは定めておらず、単に交通機関や宿泊施設への手配を行うものと定めている。そのため、本件のように契約当初の旅程に変更が生じた場合でも、旅行業者に手配ミスがない限りは旅行業者の債務不履行には該当せず、旅行業者は責任を負わないことになる。

 本件では、当初から催行最少人員を2名として募集した主催旅行にもかかわらず、参加者が2名しかいなかったとの理由で、採算等を考慮したホテル(旅行業者が手配したホテル)の判断により一方的にクルーザーからシープレインに変更されたこと、クルーザーでの移動が本件パック旅行の1つの目玉となっていたことなどから、旅行業者の手配ミスがあるものと認定し、債務不履行責任を認めた。

 損害賠償額については、Xらは本件クルーザー及び船以外の本件主催旅行についてYが手配した全ての運送機関を利用し、Yが手配した全ての宿泊のサービスを利用し、また運送及び宿泊以外のYの手配した全てのサービスを受ける機会を享受したこと、クルーザー及び船の利用代金分は、ホテルにおける宿泊料金と共に一括して算定されていることなどから財産的損害を認めなかった。

 慰謝料については、本件変更の理由、変更実施状況、本件主催旅行の特徴、Xらのこれに参加した理由等の諸事情、Xらはヘイマン島に丸2日以上自由行動の日程で滞在したのであるが、ヘイマン島の現地では料金70ないし120オーストラリアドルを払えば周辺海域のクルージングが1つ、2つの方法で利用できたこと、Xらもこのことを知っていたが、復路に船旅ができるものと思っていたため、これらのオプショナルツアーのクルージングを利用する気にならなかったこと、Yが主催旅行契約の重要な変更が生じた場合に旅行業約款二十五条の規定により支払う変更補償金の最高限度額が旅行代金の15%と定められていることなどを考慮し、各自それぞれ15万円が相当と認めた。



参考判例

  1. (1)東京高裁 昭和五十五年三月二十七日 判決
    判例時報九六二号一一五頁(帰りの飛行機便、宿泊地の変更について、旅行者の承諾を得ないことが債務不履行に当たるとして慰謝料を認定した事例)
  2. (2)神戸地裁 平成五年一月二十二日 判決
    判例時報一四七三号一二五頁(宿泊施設がホテルからコンドミニアムに変更されたケースについて債務不履行を認めた事例)
  3. (3)東京高裁 平成五年三月三十日 判決
    判例タイムズ八六三号二一六頁(アテネ空港の一部ストによりギリシャ、アテネ観光ができなかったケースについて債務不履行を否定した事例)
  4. (4)東京地裁 平成七年十月二十七日 判決
    判例タイムズ九一五号一四八頁(中国ツアー「ガイズ村の小旅行」が中止されたケースについて債務不履行を否定した事例)


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