[本文へ] 消費生活・消費者問題に関する事例や対処方法を紹介しています。

現在の位置 : トップページ > 相談事例・判例 > 消費者問題の判例集 > 自動車の瑕疵と売買契約の解除

[1998年9月:公表]

自動車の瑕疵と売買契約の解除

 本件は、自動車の瑕疵により自動車を購入した目的が達成されていないとして、自動車の売買契約の解除を認めた事冽である。(水戸地判平成九年一月二十七日判決)  

  • 判例時報1600号125頁

事件の概要

X:消費者(原告)
Y:自動車販売会社(被告)

 Xは、平成3年11月24日、Yから国産高級自動車を代金約660万円で購入した。

 平成5年8月末ころ、本件車両のエアコンの排水不良から床マットが水浸しになるトラブルが起きたという理由でYに修理を依頼し、同年9月14日に修理が完了したとして車両の引き渡しを受けた。しかし同月23日に走行中、エンシンの回転数が上がらなくなる現象か生ずるとして、Yに本件車両を引渡した。

 その後、Yか修理をしてXに引き渡そうとしたが、Xは安全性について得心の行く説明が得られるまで受領できないとして、受領を拒否した。

 Yは、自動車の引き渡しをするため、平成5年11月25日付で裁判所に供託所の指定および供託物保管者の選任の申し立てをし、その審理中の平成6年2月に、暫定的に本件車両を受領した。

 争点となったのは、平成4年2月ころから走行中にエンジンの回転数か落ちて急ブレーキをかけたようになる現象が起こることおよびエアコンの排水不良から床マットが水浸しになるなどのトラブルが発生し、Yが修理をした後も改善されていないとして、修理不能の瑕疵が存在していることを理由としてXか売買契約を解除する旨を主張したのに対して、Yはエンシントラブルに関する瑕疵は存在しておらず、排水不良については補修済みであるとして契約解除を争った点である。



理由

本件車両を運転した場合、エアコンの排水不良により水滴が助手席の上に落ち、床が水で濡れること、時々ではあるが走行中に突然速度が落ち、アクセルペダルを踏んでも暫く加速できない状態になる事実が認められる。

 そして、この瑕疵の内容は、通常の乗用自動車にはあってはならないものであるし、その程度は、Yが修理をし、かつ不具合はないはずであると主張することと併せて考えると、修理不能であるものと判断しなければならない。そうすると、Xは、本件車両を買い受けた目的を達成することができないものであるから、Xの本件解除は有効なものである。

 売買契約の解除により填補されるべき損害については、Xは平成3年12月初めから平成5年9月末まで約2年間本件車両を使用したこと、ただしその間数回にわたり走行中に異常な状態が生じ、正常な形での使用はできなかったことなどの事情を考慮すると、本件車両の売買代金から使用料相当額として4割を控除し、かつ弁護士費用として50万円を認めるのが相当である(認容合計金額448万7千円)。



解説

自動車の売買契約に関しては、新車に関する売買契約においても、自動車の不具合に関して消費生活センターなとに寄せられる消費者苦情・被害事例は少なくない。

 消費者から不具合についての苦情が持ち込まれた場合の解決は容易でないことか多く、販売業者やメーカーは不具合程度では瑕疵であるとは認めず、無償の修理すら拒否するケースも珍しくない。

 また、修理によって改善されないケースも少なくないのに、そうした場合にも契約の解除や瑕疵担保責任を認めようとしないことも多く、完全な修理や交換を求める購入者との間で紛糾することが少なくない。

 自動車の場合には、一般の家電製品の場合と違って登録制度があることもあって、メーカーや販売業者は瑕疵の範囲を極めて狭く限定的に取り扱おうとする傾向が強いようで、瑕疵に関する問題の解決は難しくなっているのが実情である。

 本件では、こうした新車の売買契約に関して、自動車の瑕疵を理由にする契約解除が認められた事例である。

 「瑕疵」とは、一般的に本判決もいうように「売買の目的物か通常有すべき性能・品質を有していないこと」とされている。本件での主な争点は、エアコンの排水不良と走行中にエンジンの回転数が上がらなくなることが瑕疵に該当するか否か、これによる契約解除が認められるかという点であった。

 判決ではこの点について、「この瑕疵の内容は、通常の乗用自動車にはあってはならないものである」「修理不能である」ことから瑕疵に当たると判断した。類似の事例の処理に当たって参考になると思われる。

 なお、Yは、裁判所に供託所の指定、供託物保管者選任の申し立てをしているが、これは、Xが自動車の受領を拒否したため民法四九五条に基づいて、自動車を供託するために申し立てを行ったものである。



参考判例

  1. (1)自動車の瑕疵を肯定した事例
    (大阪高判 昭和五十八年十一月三十日 判例タイムズ五一九号一四五頁)
  2. (2)自動車の瑕疵を否定した事例
    (東京地判 平成五年一月二十八日、東京地判 昭和五十九年九月十二日 判例タイムズ五四四号一六七頁)
  3. (3)大規模な遊戯施設の瑕疵を否定した事例
    (東京地判 平成七年三月二十九日 判例時報一五五五号六五頁)


消費者問題の判例集トップページへ

ページトップへ