[2013年7月4日:公表]
刈払機(草刈機)の使い方に注意−指の切断や目に障害を負う事故も−
*詳細な内容につきましては、本ページの最後にある「報告書本文[PDF形式]」をご覧ください。
ガソリンエンジンや電気モーターの動力により、金属製の刈刃やナイロン製のコードを高速回転させて草を刈る、刈払機は、農機具店やホームセンターのほか、インターネットからでも購入することができることから、園芸工具として、一般消費者にも広く普及してきています。
しかし、便利な刈払機も使い方に注意しないと、思わぬ事故を起こすことがあります。
PIO-NET(パイオネット:全国消費生活情報ネットワーク・システム)には、2008〜2012年度(2013年4月15日までの登録分)の約5年間に刈払機を含む芝刈り機の安全・衛生や品質・機能、役務品質に関する相談が160件、そのうち、危害情報が11件、危険情報が23件ありました。また、医療機関ネットワークには、2010年12月〜2013年3月までに刈払機を含む芝刈り機による事故情報が34件報告されています。
そこで、事故の未然防止を図るために、具体的な事故事例を再現し、刈払機の使用上の注意(保護具の必要性、キックバックなど機械特有の事例、誤った使い方による事例など)について、消費者に情報提供することとしました。
テスト結果
再現テスト
- チップソーなど金属製の刈刃を使用中に、刈刃の先端から右側部分が障害物や地面に接触すると、刈払機ごと跳ね返されることがありました。
- 刈刃の接触位置によっては、樹脂製の試験片及び空き缶は10m以上飛散し、使用者の足にあたる場合もありました。また、飛散防護カバーを取り外した場合は、使用者に飛散する草の量が増えました。
- エンジンを切らずに絡まった草を取り除こうとした場合、草が取れた途端に刈刃の回転が再開し、手を受傷する可能性がありました。
- 肩掛けバンドを装着していない状態で転倒した場合は、刈刃が容易に身体に触れることがありました。
表示の調査
すべての本体に取り扱いについての警告表示がありましたが、表示方法や内容には違いがありました。また、すべての取扱説明書に保護具の装着やキックバックなどについての注意事項の記載がありましたが、表示方法には違いがありました。
付属品の調査
肩掛けバンドの設定がなく、保護眼鏡が付属していない銘柄がありました。
消費者へのアドバイス
- 事故を防ぐために、短時間の作業でも、取扱説明書に記載されているような、長袖、長ズボンを着用し、保護眼鏡などの保護具を身につけましょう。
- 刈払機には、刈刃によるキックバックや飛散物など機械特有の危険があります。これらを理解し、正しく使用しましょう。特に初めて使用する場合は、取扱説明書をよく読み、使用方法や危険性を十分理解してから、使用しましょう。また、高所の枝払いなど目的以外で使用することは、やめましょう。
- 刈る草が柔らかい場合や作業場所が構造物周辺の場合は、キックバックが生じないナイロンカッターの使用を検討しましょう。
- 作業中に周囲の人が、キックバックや飛散物などで受傷することがあります。作業前に、周囲に人がいないことを確認しましょう。作業中の人には、近づかないようにしましょう。飛散する危険がある小石や空き缶などの障害物は事前に片付けましょう。
- エンジンを切らずに絡まった草を手で取り除こうとした場合、草が取れた途端に刈刃の回転が再開し、手を受傷する可能性がありました。作業中、刈刃に草などが絡まったときは、必ずエンジンを停止したり、バッテリーやコンセントを外したりして、不意に刈刃が作動しない状態にしましょう。
- 肩掛けバンドを装着していない状態で転倒した場合は、刈刃が容易に身体に触れ、受傷する危険があります。作業中は、適正な長さに調整した肩掛けバンドを必ず装着しましょう。足場の悪い場所や急傾斜地での作業は、かまなど手工具の使用も検討しましょう。
業界への要望
- 初めての使用者でも自分に適した刈払機、刈刃を選択できるよう、販売の際には、用途や使用場所の目安を示すなど、一層の取り組みを要望します。
- 使用者が作業前後などの点検を含めた正しい使い方や作業に伴う危険性をより理解できるよう、使い方や注意をわかりやすくまとめた動画を添付するなど、一層の啓発活動を要望します。
要望先
- 一般社団法人日本農業機械工業会
- 一般社団法人日本農業機械化協会
- 一般社団法人日本電機工業会
- 一般社団法人日本ドゥ・イット・ユアセルフ協会
- 公益社団法人日本通信販売協会
情報提供先
- 消費者庁 消費者安全課
- 経済産業省 製造産業局 産業機械課
- 農林水産省 生産局 農産部 技術普及課
- 消費者委員会事務局
動画
※大きな音がします。視聴に際して、ご注意ください。
業界の意見 ※2013年8月6日 追加
「株式会社 山善」より
刈払機使用時における危険について、細かく試験されており、使用者に分かりやすい内容になっていると思います。
弊社でも、テストは繰り返し行っておりますが、飛散物に対するテストを強化していく所存です。
取扱説明書への注意喚起については、国民生活センターから各メーカーに対し統一のフォーマット(説明文)を指導することで、より消費者にとってわかりやすいものにすることができると思います。
業界の意見 ※2013年12月11日 追加
「一般社団法人日本農業機械工業会」より
今回の商品テスト結果は、刈払機に特徴的な事故形態を再現し危険性を検証されたものであり、国民生活センターの立場から一般消費者に広く情報提供されたことは、刈払機事故の未然防止につながるものと期待されます。
当会としては、これまで、防護眼鏡の標準装備、固定スロットル廃止、安全啓発活動などの対応を行って参りましたが、今回のテスト結果及び要望を受け、刈払機事故の未然防止のため、更なる措置を講じて参りたいと考えております。
業界の対応 ※2013年8月6日 追加
「株式会社 山善」より
取扱説明書における注意喚起を強化するとともに、より安全、安心で使用しやすい保護具の開発に努めます。
業界の対応 ※2013年12月11日 追加
「一般社団法人日本農業機械工業会」より
貴センターから商品テスト結果に基づく要望を受け、以下の取り組みを実施することといたしました。
- 使用者が使用環境に適した刈払機、用途に適した刈刃を容易に選択できるよう、製品カタログ、Webサイト等で情報提供を行うことといたします。
- 柔らかい草や作業場所が構造物周辺の場合は、キックバックによる刈払機事故の未然防止のため、ナイロンコードカッターの使用が効果的である事を啓発いたします。
- 取扱説明書に記載する事項について再確認を行い、使用者がより判りやすいようにイラスト等を盛り込んだ取扱説明書の作成に努めることといたします。
- 特に、今回ご指摘のありました保護具の装着の必要性、キックバックなどの使用上の注意については重点的に注意喚起を行うことといたします。
- 安全啓発については、現在刈払機を所有している方を含め、広く周知をする必要があることから、Webサイトを活用して、使用者が作業前後などの点検を含めた正しい使い方や作業に伴う危険性をより理解できるよう、イラスト・映像等を活用した啓発活動を行うことといたします。
本件連絡先 商品テスト部
電話 042-758-3165
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